ライターI(以下I):初登場以来、可憐な雰囲気としっかりした所作で私の心をとらえて離さなかった比奈さん(演・堀田真由)が、劇中で北条義時(演・小栗旬)と離縁することになりました。
編集者A(以下A):時政(演・坂東彌十郎)が、義時前妻八重(演・新垣結衣)と比奈を間違えた際に、〈雛人形のひなです〉と絶妙な切り返しをした際にIさん、比奈のことを絶賛してましたもんね。
I:鎌倉歴史文化交流館の山本みなみさんの著書『史伝 北条義時』でも〈比企と北条の架け橋〉ということが書かれていました。それだけに、北条と比企が決裂して、比奈さんの実家の比企家が滅ぼされた状況の中で、絶対に別離をしないという起請文があったとしても、ほかの御家人たちへの手前難しかったのではないでしょうか。
A:史実の義時と比奈ですが、御所で侍女として働いていた比奈を義時が見初めたということになっています。その仲立ちをしたのが鎌倉殿頼朝。実際には頼朝が命じて起請文を起こさせたと伝えられています。
I:さて、今週は、8月14日に滋賀県長浜市で開催されたファンイベントに登場した比奈役の堀田真由さんの肉声を交えながらお届けしたいと思います。なぜ比奈が長浜に? ということですが、堀田真由さんの出身地だそうです。いわば凱旋イベントになったということですね。
A:長浜といえば、羽柴秀吉が初めて城持ち大名として領主になった記念すべき地です。桜が満開のころに長浜城跡を訪ねたこともありますし、曳山祭りの取材に行ったこともあります。浅井長政の小谷城取材の際には長浜に宿をとったりした、懐かしい場所です。
I:今も『サライ』で連載を持たれている小和田哲男先生に小谷城の絶景紅葉を紹介いただいたのは2005年のことですね?
A:はい。今でこそ絶景紅葉スポットとして知られていますが、当時は「紅葉満開」時に訪れても誰もいない、本物の穴場でした。今でもあの美しい紅葉と「こんな穴場があったのか!」と驚いた記憶が蘇ります(笑)。あ、すみません。脱線してしまいましたね。
I:それでは長浜出身の堀田真由さんが比奈役について語ってくれたコメントをどうぞ。
〈歴史上は「姫の前」という方がいらっしゃって、その方が今回は「比奈」として描かれています。もちろん歴史に沿ってはいますが、三谷さんのオリジナルな部分もあるので、実際に台本を読んだときはすごく小悪魔的な女性だなと思いました。そしてとっても芯が強くて、比企と北条の懸け橋となる方なので、やっぱり心が、思いがすごく強くて、圧も若干強い(笑)。そういった女性としての強さっていうところを出していけたらと思いました〉
A:「小悪魔的」という観念は中世にはなかったとは思いますが、それでも史実の義時の惚れ具合を勘案すると、それに近い要素を持ち合わせていたんでしょうね。
I:いったいどういう女性だったんでしょうね。
【マスクに書かれた〈ようこそ比奈〉の文字。次ページに続きます】