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旅行

次に拝観できるのは2076年!? 薩摩藩島津家ゆかりの大黒天が60年ぶりに特別開帳

【京都 美の鑑賞歩き】 大黒寺(京都市伏見区)

京都では毎年、春と秋に通常は非公開の仏像や建築、絵画、庭園などが「特別公開」される。この催しは「京都非公開文化財特別公開」と呼ばれ、この春で通算69回を数える。今回は初公開となる4寺を含む17の社寺で開催されている。京都を訪れた際はぜひ、普段見ることのできない「伝統の美」の数々にふれてみてはいかがだろう。

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金張りの厨子に祀られている、60年に1度開帳の秘仏『大黒天』。写真提供/京都古文化保存協会


■もとは古代インドのシヴァ神の化身

京都市の南部・伏見、近鉄丹波橋駅から歩いて数分の住宅街に大黒寺はある。その本尊である大黒天像が、この春、特別公開されている。なぜ「特別」なのかというと、この大黒天像は60年に1度の甲子(きのえね)の年にしか開帳されない秘仏だからだ。いま見逃したら、次は60年後の2076年まで待たねばならない。

蓮の花の上にのった大黒天の像高は約24cm。小さな像だが、ご利益一杯で、「伏見大黒天」、「出世大黒天」とも呼ばれ、近在の人々の厚い信仰信仰を集めてきた。

大黒天は古代インドのシヴァ神の化身であり、本来は闘いの神である。中国では食料の守護神として厨房に祀られた。背に担ぐ大きな袋には食料が詰まっており、日本では福徳の神として人気を集め、江戸時代には七福神のひとつとなった。
■寺田屋事件の死者を弔う古刹

大黒寺のある伏見の地は幕末動乱の舞台だ。歴史愛好家を惹き付ける史跡が住宅街のあちこちに点在している。大黒寺も、そのひとつで、創建は平安時代初期。当初は円通山長福寺と命名され、豊臣秀吉をはじめ多くの戦国武将から信奉された。

江戸時代になると、付近に薩摩藩、いまの鹿児島県島津家の藩邸が置かれた。それ以前、長福寺には島津家の守り本尊「出世大黒天」が祀(まつ)られていた。そこで元和(げんな)元年(1615)、島津家はこの寺を薩摩藩の祈願所とし、寺名を大黒寺と改めた。

幕末の動乱の世になると、西郷隆盛や大久保利通らが度々この寺に集い国事を論じた。その部屋はいまも保存されており、多くの志士たちの遺墨なども残されている。

明治維新を動かした西郷隆盛らが度々集まった一室。(『(大黒寺)西郷隆盛・大久保利通会談の間』写真提供=京都古文化保存協会)

明治維新を動かした西郷隆盛らが度々集まった一室『(大黒寺)西郷隆盛・大久保利通会談の間』。写真提供/京都古文化保存協会

 

境内の墓地に、「伏見寺田屋殉難九烈士之墓」がある。伏見の船宿・寺田屋で起きた寺田屋事件の死者を弔うものであるが--。

文久2年(1862)4月23日深夜、悲劇ともいえる同士討ちが勃発した。

薩摩藩主の父・島津久光(ひさみつ)は倒幕を避け、朝廷と徳川幕府の合体を志向していた。しかし、尊王攘夷を主張する過激派の志士たちはそれに猛反発。寺田屋に40人ほどが集結し、蜂起を画策する。久光は剣術に優れた藩士8名を派遣し帰順を促したが、説得に失敗。両者の間で激しい切り合いとなり、9名の志士が亡くなった。その薩摩藩士たちが「伏見寺田屋殉難九烈士之墓」に眠っている。ちなみに、同じ寺田屋で坂本龍馬襲撃事件が起きるのは、その4年後の慶応2年(1866)のことである。

今年のゴールデンウィークに京都を訪れたら、大黒寺のある伏見まで足を延ばし、同地を散策しながら歴史のドラマに思いを馳せてみてはいかがだろう。

境内の墓地にある「伏見寺田屋殉難九烈士之墓」。いまも訪れる人が絶えない。

境内の墓地にある「伏見寺田屋殉難九烈士之墓」。いまも訪れる人が絶えない。

 

【大黒寺】 
住所/ 京都市伏見区鷹匠町4
公開期間/4月29日(金・祝)~5月8日(日)
拝観時間/9:00~16:00(受付終了)
拝観料/800円

文/田中昭三
京都大学文学部卒。編集者を経てフリーに。日本の伝統文化の取材・執筆にあたる。『サライの「日本庭園」完全ガイド』(小学館)、『入江泰吉と歩く大和路仏像巡礼』(ウエッジ)、『江戸東京の庭園散歩』(JTBパブリッシング)ほか。

 

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