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(龍安寺)群仙図トリミング
きらびやかな襖絵「群仙図」の4面(写真提供/京都古文化保存協会)。


京都では毎年春と秋に、通常は非公開の国宝や重要文化財を含む仏像や建築、絵画、庭園などが「特別公開」される。この催しは、「京都非公開文化財特別公開」と呼ばれ、この秋で通算68回を数える。今回は市内の20社寺などで開催されているので、京都を訪れた際はぜひ、普段見ることのできない「伝統の美」の数々にふれてみたい。

禅の庭といえば、京都の龍安寺方丈(りょうあんじほうじょう)の石庭が名高い。その広さは、わずか100坪(約330平方メートル)にも満たない。白砂に15の石が配列されているだけである。築造は15世紀中ごろの室町時代中期というのが定説である。しかし作者は不明、庭の意図もはっきりしない。にもかかわらず、連日、国内外から多くの観光客が押し寄せる。

この方丈庭園は、これまでモノトーンの庭と思われていた。それが禅の心にも通じると講釈した人もいる。庭だけではない。昭和に描かれた方丈襖絵(ほうじょうふすまえ)も、庭のモノクロの世界に合わせて墨一色の水墨山水画である。

龍安寺は室町時代中期の宝徳2年(1450)の創建。方丈や本堂は寛政9年(1797)に焼失してしまう。方丈再興にあたっては、境内にある西源院(せいげんいん)の方丈を移築した。その方丈の襖絵は、当時、江戸幕府の御用絵師だった狩野派によるもの。大胆な金地に極彩色をほどこした画風であり、モノトーンの世界とはまったくかけ離れている。

具体的にどんな襖絵だったのか。その絢爛豪華な6面が特別公開されている。

龍安寺にあった狩野派の襖絵は、なんと70面以上だったという。ところが明治政府の神仏分離令で寺が衰退したとき、それらのほとんどが売却された。その後、九州の炭鉱王・伊藤伝右衛門(いとう・でんえもん1861~1947)の手に渡り、昭和8年(1933)の大阪城築城350年祭で一般公開された。

しかし、襖絵は戦後に分散し、一部は海を渡り、現在はアメリカのメトロポリタン美術館やシアトル美術館に所蔵されている。

今回公開されるのは「群仙図」(ぐんせんず)4面と「琴棋書画図」(きんきしょがず)2面である。これらは平成22年にアメリカのオークションに出品され、龍安寺が買い戻したものだ。ごく一部とはいえ、115年振りに我が家に戻ってきたのである。

「群仙図」は神仙境に遊ぶ仙人たちが主題。「琴棋書画図」は、タイトルに記された君子がたしなむ四芸(しげい)をテーマにしたもの。いずれも金地を背景に、中国の衣服をまとった人物が生き生きと描かれている。

(龍安寺)琴棋書画図トリミング
「琴棋書画図」の2面(写真提供/京都古文化保存協会)。

これらの襖絵は特別公開の期間中、方丈とは別の部屋に展示される。もし、今の方丈の襖全体が色彩豊かな狩野派の作品となったら、石庭とのバランスはどうなるだろうか。極彩色とモノトーン、ちょっとアンバランスになるかも知れない。

ところが数年前、石庭の15の石が洗浄された。その結果、ほとんどグレーと思われていた石の表面は意外にも色彩豊かだったことが判明した。これなら狩野派の襖絵とも調和する。どうやら龍安寺石庭はモノクロの世界というのは、勝手な思い込みだったようだ。

特別公開の襖絵を見ながら、昔日(せきじつ)の龍安寺に想いをはせてみてはどうだろうか。石庭のイメージが180度変わるかもしれない。

亀を意味する茶室「蔵六庵」

(龍安寺)蔵六庵
4畳の茶室「蔵六庵」。中板に炉が切られている(写真提供/京都古文化保存協会)。

今回、茶室「蔵六庵」も公開されている。広さは4畳。「中板」(なかいた)という長い板が敷かれ、そこに炉が切られている。
茶室名の「蔵六」とは亀のことをいう。亀は頭・尾・両手・両足の6つを甲羅の中に蔵(おさ)めるので、その名が生まれた。6は仏教でいう眼・耳・鼻・舌・身・意の「六根」(ろっこん)にも通じる。

露地には、黄門さまの愛称で名高い徳川光圀(みつくに)が寄進した蹲踞(つくばい)がある。「吾唯足知」(われただたるをしる)という禅語を図案化したものだ。方丈の裏手にその複製が置かれている。これを機会にぜひ本物を見ておきたい。

 

龍安寺
住所/京都市右京区龍安寺御陵ノ下町13
公開期間/10月30日(金)~11月8日(日)
公開時間/9:00~16:00(受付終了)
拝観料/800円
URL/http://www.ryoanji.jp
問い合わせ先/075-754-0120(京都古文化保存協会)

 

文/田中昭三
京都大学文学部卒。編集者を経てフリーに。日本の伝統文化の取材・執筆にあたる。『サライの「日本庭園」完全ガイド』(小学館)、『入江泰吉と歩く大和路仏像巡礼』(ウエッジ)、『江戸東京の庭園散歩』(JTBパブリッシング)ほか。

 

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