写真・文/矢崎海里
京都の伝統工芸品である「京焼・清水焼」。
かつて「京焼」は江戸時代初期から東山山麓地域を中心に、「清水焼」は清水寺参道で作られていました。
現在では京都で焼かれる焼き物を総称して「京焼・清水焼」と呼び、現在でも多くの窯元や作家が活動をしています。
今回は清水寺参道である五条坂・茶わん坂周辺で、「京焼・清水焼」に触れる旅をお伝えします。
【五条坂・茶わん坂へのアクセス】
五条坂・茶わん坂は清水寺へと続く参道です。
五条坂入り口へのアクセスは、バス・電車が便利です。
・市バス「五条坂」下車
・京阪電車京都線「清水五条」駅下車 東へ徒歩10分
清水寺からもすぐで、観光のついでに寄ることができるのも魅力のひとつ。
今回は清水寺から茶わん坂、五条坂とゆったり歩いて下りながら、京焼・清水焼を楽しめる施設を3軒ご紹介します。
見る・買う・作る・食べるが全て揃う!「あさひ坂」
「京焼・清水焼」の専門店としてはじまった「朝日堂」は明治3年創業と歴史のあるお店。
清水寺仁王門の手前には本店がありますが、今回ご紹介するのは陶芸体験やカフェもある複合施設「あさひ坂」。
全て朝日堂がプロデュースするお店です。
現在は「京焼・清水焼」のみにこだわらず、日本各地の陶磁器を販売しています。
うつわを買うなら「クラフトショップ朝日陶庵」または、茶わん坂に面する「朝日堂茶わん坂店美器」。
お店の前にも可愛らしいうつわがたくさん並んでいて、自然とお店の中に引き込まれます。
京都で活動する作家さんのうつわがたくさん。
作家さんのお顔やプロフィールが見られるのもいいですね。
京都らしい抹茶碗も取り扱っています。
日本の繊細で綿密なものづくりの象徴のような絵付けも数多く見ることができます。
華やかなぐい飲みは、デザインを愛でながらお酒を楽しめますね。
ミニチュア小物はたくさんコレクションしたくなるかわいさ。
陶器の帯留めも京都らしい作品です。
柄も色も豊富なので、着物に合うぴったりな物が見つかるでしょう。
「アートサロンくら」は、土蔵を改装したギャラリー。
若手を中心に、全国の工芸作品による作品展を半月ごとに開催しています。
ギャラリーというと少し敷居が高く感じますが、ガラス張りで入りやすく、ゆったりと作品を鑑賞できます。
息をのむような美しい作品は、いくらでも見ていられます。
あさひ坂にはカフェやレストランもあります。
「KOYA CAFÉ」はその名の通り「小屋」のようなカフェです。
抹茶スイーツや生麩スイーツなど、京都らしいメニューも並びます。
全品テイクアウト可能なので、周辺散策のお供や、中庭でゆったりと楽しむのもおすすめです。
カフェの隣にはランチと絶景を堪能できる「音羽茶寮」も。
お蕎麦や和牛のすき焼き、甘味などが味わえます。
晴れた日はテラスから京都が一望できます。
こだわりの食器と楽しむ絶景とご飯は、至福のひとときです。
「美器工房」では陶芸体験ができます。
完全予約制ですが、当日でも空きがあれば対応できることもあるそうなので、気になる方は一度問い合わせてみて下さい。
あさひ坂HP:https://www.asahizaka.kyoto/
伝統とモダンの調和 「東五六」
工芸作家や陶工たちの住む街として知られる「茶わん坂」にお店を構える「東五六」。
茶わん坂の「東山区五条橋東六丁目」の地名にちなみ命名された、伝統とモダンとの調和を基調とする落ち着いたお店です。
私は普段管理栄養士をしており、料理と器のバランスを考えながら仕事をしているのですが、なかなか柄の多い器は使いこなせない・・・
ですが、こちらの器は華やかですがシンプルで使いやすそうな素敵な柄。
素材の色を生かした野菜のお煮しめなどを盛りつけたいな、と思いました。
可愛らしい絵付けの入れ物は、調味料入れ。
ゆず胡椒や七味などを入れれば、食卓が華やかになりますね。
おめでたいおせちがモチーフの箸置きは、年中使いたくなります。
湯のみだけでも種類豊富。
色鮮やかな器で飲めば、気分も明るくなりますね。
お店の入り口には豆皿が。
この豆皿、「かるた」になっていて、かるたあそびのように並べられています。
自分の名前で選んだり、絵柄で選んだり・・・。
選ぶだけでも楽しくなる作品です。
東五六には京都はもちろん、日本全国の有名料理店の職人さんたちが、うつわを買い付けに来るそうです。
店員さんも皆さん気さくで、私も京焼・清水焼の良さや特徴をたくさん教えて頂きました。
お店にない作品も相談に乗ってくれるので、お気に入りの一枚がきっと見つかるお店です。
東五六HP:http://tohgoro.co.jp/
京都の焼き物の”今”に触れる 「京都陶磁器会館」
五条坂を下り、市バス「五条坂」バス停の目の前にあるのが「京都陶磁器会館」です。
館内は自然光の中で京焼・清水焼を見て、触れて、知ることのできる空間。
京都で活躍する作家、窯元の作品を展示・販売しています。
明るいところでじっくりと作品を鑑賞できます。
定番のうつわも数多く取りそろえていますが、アイディア商品やアクセサリーが豊富なのも特徴です。
京野菜をモチーフにした豆皿。
お上品におばんざいを盛りつけてみたいひと皿です。
こちらはどこにでもくっつく花器。
壁にピンを刺し固定するだけで、お部屋が華やかになります。
こちらは着物を着た女性グループが真剣に選んでいたブローチ。
アクセサリーコーナーには常に女性が集まっており、ひとつひとつ手にとって真剣に選んでいました。
陶磁器を買って帰るのは難しい方も、アクセサリーならかさばらず、おみやげにも自分用にも買いたい作品です。
近くにはレンタル着物店も多く店を構えているので、あわせてこちらで和小物を選んで京都散策するのも、旅の思い出になりますね。
京都陶磁器会館HP:http://kyototoujikikaikan.or.jp/
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少しずつ全国各地のやきものの産地を巡っていますが、京焼・清水焼は絵付けがとてもすばらしいと感じました。
華やかなものから京都らしい繊細で上品なものまで幅広く、長年日本の伝統文化を牽引している地ならではのものづくりを体感できます。
京都の観光地は行き飽きた、お寺巡りばかりは退屈、なんて方。
今度は落ち着いた参道をゆったり散歩しながら、やきものを楽しむ旅なんていかがですか。
文/矢崎海里(やざき・かいり)
管理栄養士やフードスペシャリストなどの資格を生かし、企業で働く傍ら、Webメディアでも活動。おいしく食べて健康になれるごはんを研究中。