「京都通」を標榜する方は多いもの。コロナ禍でなければ、年に数回、いやいや月に2度、3度は京都を訪れるという方もいらっしゃいます。

そんな方の中には「数年通い詰めて、やっとお馴染みさんになった」とか「この間、初めて奥の間へ通してもらいました」といったエピソードをちょくちょく耳にいたします。

あるいは「あそこは、誰ぞの紹介がなかったら入れません」といったことも、京都では決して珍しいことではないようです。

ちょっと奥の知れないところが、京都の魅力とおっしゃる方も大勢おられます。こうしたエピソードを考えますと、いま「京都通」を標榜しておられる方も、ちょっと不安になるのかも知れませんね。

長く京都で商いをしておられる歴史あるお店のご主人でも「創業100年、200年程度では、恥ずかしくて老舗などとは言えません」とおっしゃいます。そんな「奥深き京都の姿」を、ちょっと違った角度からご紹介するのが『サライ京都チャンネル』の「京都の奥義」です。

まだ見たことのない「襖の奥」にある京都をご紹介しております。どうぞ、お楽しみください。きっと、あなたがより深い「京都通」になる一助になると存じます。

「京都の観光名所は?」と問われたら、どこを思い浮かべられるでしょうか? 人それぞれでございますが、人気の高さで言うなら伏見稲荷大社、清水寺、元離宮二条城、東寺などが挙げられます。京都の伝統工芸品という視点で見た場合には、「清水」ですよね。陶磁器愛好家にとっては、京都を訪れたら、清水茶わん坂に行くのが楽しみだという方も多いかもしれません。

好みの作品との出会いというのは、多くの場合、複数のお店を回って偶然に見出すか、あるいは支持する作家の作品の中から見出す場合が多いでしょう。しかしながら、こうした探し方ですと、必ず好みの作品に巡り会えるとは限りません。

なかなか気に入った作品に出会うことのできない陶磁器愛好家の気持ちに寄り添う形で、陶芸家と陶磁器愛好家の出会いをテーマにした隠れ家のようなサロンを所有する、清水茶わん坂『東五六』を取材しました。『東五六』店主が陶芸家と取り組む、清水焼の新たな可能性を探る舞台裏にも迫ります。

普段使いのものから高価なものまで、さまざまな陶器が並ぶ。

清水焼の陶芸家と陶磁器愛好家が直接交流できる場

五条坂から清水寺に通じるこの坂は通称「茶わん坂」と呼ばれ京焼・清水焼発祥の地とも言われています。昔から、多種多才な陶芸家が住む閑静な街であり、五条坂の中程からは、清水寺の鮮やかな朱塗りの三重塔を見ることができます。

東山区五条橋東六丁目にある『東五六』という店名は、この地名に因んで命名されました。

茶わん坂の中でも一際目立つのが『東五六』の店舗だ。

『東五六』では、京焼・清水焼の専門店として、匠の技による伝統的な京焼・清水焼の逸品から、現代作家の前衛的な作品まで幅広く取り扱っています。新進気鋭の若手作家の発掘にも、積極的に取り組まれているのも特徴的です。

「清水焼」とは、清水坂界隈の窯元で焼かれていた焼き物の総称。かつて宮家や将軍家などより御用拝命を受けたことで箔がつき、日本を代表する焼き物となりました。高級志向と装飾性の高さ、そして多様性が、清水焼の大きな特徴といえます。

「少量多品種なのが京焼・清水焼の特徴です。京都は材料がとれるわけではないので、各作り手さんが仕入れたり、取りに行ったりして、独自のスタイルで作られています。

かつて京都が中心地だった頃、各地方の陶工さんが御用拝命という形で器や調度品を作っていた背景から、京焼・清水焼は各地方のエッセンスも入っているんです」と『東五六』代表の浅井洋平さん(40歳)が教えてくださいました。

今日の京焼・清水焼は、手びねり、轆轤、石膏型による型押し、流し込みなどの成形技法と、染付・色絵・金銀彩・交趾などの装飾技法を組み合わせ、先人の教えを基盤に常に新しい京焼・清水焼が創造されています。

『東五六』代表の浅井洋平さん。

『東五六』の2階には、“陶芸家と陶磁器愛好家の集う処”というお店のコンセプトをもとにした空間が常設されています。このサロンスペースは、陶芸家どうしがアイデアを語り合ったり、陶芸家と陶磁器愛好家が直接交流できる場として活用されています。

店舗2階がサロンスペースになっている。隣には、ギャラリーも併設。

清水焼の新たな可能性を探る舞台裏へ

東五六とともに清水焼の伝統を守りつつ、時代変化や生活様式の変容に適応できる焼き物作りに挑戦している、陶芸家の一人・小川宣之さん(58歳)の工房を訪ねました。

閑静な住宅街の中にある、小川さんのギャラリー。『東五六』に依頼し、陶芸家の都合が合えば、作陶現場に行くことも出来る。

陶芸家としてどのような思いで、陶芸に取り組まれているのでしょうか。お聞きしました。

「父親は京焼・清水焼の陶芸家として作陶していましたが、僕は京都にいるだけで、京焼・清水焼を作陶しているとは思っていないんです。イタリアのミラノコレクションやフランスのメゾン・エ・オブジェのように世間のトレンドや流行る前の兆しを作品や作陶に活かしていきたいと思って作っています」と小川さん。

「『東五六』の店主・浅井さんとの仕事は、ただ作陶するだけではなく、今までの陶器の販売にはなかった新しい販路に乗せていくところが面白いですね」と小川さんは言います。

『東五六』とともに、ファッションを始めとした生活全体のおしゃれを提案するセレクトショップとのコラボレーションが決まっているとのこと。従来の京焼・清水焼の枠を超えた今後の展開に、目が離せません。

アトリエでの作陶風景。
銀色を印象的に取り入れた、小川さんの陶器。

***

「焼き物を陶器以外の形で、使うことができるように模索をしています」と浅井さん。今は、3Dプリンターを導入して、メーカーの素材開発や建材の製作をしているそうです。

伝統を継承しながら、静かに進化し続ける京焼・清水焼。そんなことを意識しながら、陶器を眺めると、今までとは違った見方が生まれるのではないでしょうか。

■京焼・清水焼 茶わん坂 東五六
住所:京都市東山区五条橋東六丁目539
電話番号:075-561-0056
営業時間:9時〜18時まで(年中無休)
https://www.tohgoro.co.jp
Facebook:https://www.facebook.com/tohgoro.chawanzaka/
インスタグラム:https://www.instagram.com/tohgoro_kyoto/

企画・編集/京都メディアライン(http://kyotomedialine.com

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