取材・文/末原美裕

庭園を回遊しただけで、仏の説法を聞いた後のように心が静かに癒される。そんな凛として美しく穏やかな寺院が、京都・嵯峨嵐山にある宝厳院(ほうげんいん)です。

大亀山宝厳院は、臨済宗大本山天龍寺の塔頭寺院で、1461年室町幕府の管領細川頼之公により天龍寺開山夢窓国師の第三世法孫聖仲永光禅師を開山に迎え創建されました。創建時は京都市上京区にありましたが、応仁の乱により焼失、再建され、その後変遷を経て天龍寺塔頭弘源寺境内に移転の後、現在の地に移転再興されています。

その境内にある「獅子吼(ししく)の庭」は室町時代に中国に二度渡った禅僧策彦周良周良禅師によって作庭されました。悠然と広がる嵐山の景観が巧みに取り入れられた借景回遊式庭園であり、江戸時代に京都の名所名園を収録した『都林泉名勝図会』にも選ばれた名園です。ちなみに「獅子吼」とは「仏が説法する」という意味で、釈迦が説法をすると獅子も平伏する、とも表現されます。

庭園内にある獅子岩。まるで獅子が寝そべっているかのように堂々としています。

庭園内をそぞろ歩くことで、囁くような小鳥の歌声、虫の羽音、風が揺らす葉のさざめき、川のせせらぎが自然と耳に入り、空を覆い尽くさんばかりのみずみずしい青もみじ、緑のビロードのように広がるシッポゴケ、ゴツゴツとした力強い岩を目の当たりにし、生命の豊かさを感じることでしょう。

人生の真理、正道が五感に染み込むような「無言の説法」をこの庭では感じられます。

清らかな小川が境内を潤します。

緑に洗われるような、青もみじのトンネル。

美しいシッポゴケの広がり。ここまでの面積を有する場所は京都でも珍しいそうです。

宝厳院の副住職・田原英彦さんは、「心模様によって同じ場所でも見える景色が異なります。赴くままに立ち止まったり、振り向いたりしながら、満足ゆくまで何度でも回って見てください」とおっしゃっていました。

この宝厳院のお庭は、通常は非公開であり、春の特別拝観として6月30日までの期間限定で門戸が開かれます。初夏の溢れんばかりの緑のシャワーは心を癒し、そして無言の説法が五感から染み渡ってくることでしょう。この機会に、ぜひお訪ねください。

■宝厳院
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町36
アクセス:市バス「嵐山天龍寺前」下車 徒歩5分
JR山陰本線(嵯峨野線)「嵯峨嵐山」駅下車、徒歩10分
拝観時間:9:00~17:00 ※春の特別拝観は6月30日までとなります。
拝観料金: 500円
電話:075-861-0091

JR東海「そうだ 京都、行こう。」青もみじ御朱印めぐり:
http://souda-kyoto.jp/travelplan/early-summer_sp/index.html

取材・文/末原美裕

 

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