写真・文/yOU(河崎夕子)
ハノイはベトナムの北部に位置する首都。ホーチミンに次ぐベトナム第二の大都市だ。近年は都市化が進んでいるが、新旧のベトナムを体感できる観光スポットもたくさん。今回はそんなハノイを拠点にして日帰りで郊外へ、まだ残る古いベトナムを体感できる村々を紹介しよう。
前編のドゥオンラム村に続いて、ハノイから日帰りできるシルクの町と言われるヴァンフック村をご紹介しよう。ベトナムのシルク産業は5世紀には既に中国に送られていたと言われるほど古い。この伝統産業を村全体で守り続けているのが、ハノイから南西に10キロ、車で30分ほどの所にあるハタイ省ヴァンフック村。この村でのシルク産業は実に1000年以上の歴史があり、現在も村人の9割以上が絹織物に携わっている。歴史の中での浮き沈みもあり衰退を見せたこともあったが、2010年には観光職業村として観光客を迎え入れる体制を整え、産業自体の再起を図っている。現在では若い職人も少しずつ増えて、シルク製品は国内のみならず、タイやラオス、その他の東南アジア諸国にも輸出されている。
ゲートをくぐるとすぐ左手に大きな寺院、まっすぐ伸びるメイン通りには両脇にシルク工房と店が立ち並ぶ。この通りの中ほどに、シルク産業を守るための活動を続けているマオさんが営む工房と店舗があった。この工房は観光スポットとしても有名で、過去の絹布の紋様を復元させ、古い機織り機を動かす技術をもち、絹糸作りから手織りまでの工程を全て手作業で行う様を気軽に見学することができる。
工房内は少し暗く、職人さんの動かす機織り機が美しいシルクの紋様を紡いで行く様子を見ていると、まるで昔々の時代にタイムスリップしたような錯覚に陥るだろう。
一通り工房内を見学した後は隣接する直営店に足を運んでみよう。美しく芸術的なシルク製品が所狭しと並んでいる店内でまず驚くのはその価格の安さ。15万ドン(約750円)〜30万ドン(約1500円)で色鮮やかなストールやネクタイが購入できるとあってすっかり目移りしてしまう。
マオさんの働きかけで現在はこの村には若い職人も増え、シルク産業は再び盛り返し、今や50軒以上の工房が忙しく稼働している。シルク産業の歴史を知り、買い物まで楽しめるヴァンフック村。シルク製品を購入するなら是非とも訪れたい。古い寺院などの観光スポットもあり、合わせて楽しむことができる。
Van Phuc(ヴァンフック村)
ヴァンフック村ツアー(TNKトラベルJAPAN)
https://www.tnkjapan.com/tours/detail/109
続いてご紹介するのはバッチャン焼きで有名なバッチャン村である。
ハノイからは南東に10キロほどの所に位置し、ヴァンフック村とは逆方向になる。元々レンガ作りが盛んな村だったが、15世紀からは陶磁器作りが始められた。バッチャン焼きはこの村で作られたものだけがそう呼ばれていて、日本でも見かける独特な文様の陶磁器だ。16世紀の安土桃山時代には「安南焼」としてすでに日本に輸入され、千利休を始め多くの茶人たちに愛用されてきたというから驚きだ。どうりで日本の器にも見られるような文様はどこか懐かしい。たくさんの工房が連なる村を歩いて小さな工房を訪ね、ここでも作業見学をさせてもらった。中には登り窯の模型。話を聞けば、このバッチャン焼きも日本と同様にかつてはこのような登り窯が用いられていたそうだ。
バッチャン焼きは流し鋳込という技法を用いて粘土を石膏型に流し入れて成形され、十分に乾燥させたら紙やすりなどで整えてから素焼きされる。素焼きの後は手作業で絵付けがされるが、バッチャン焼きらしいのがトンボや菊の花などのモチーフ。実はこの人気のモチーフは、かつて日本が輸入していた時代に日本の茶人からオーダーされたものだったらしい。絵付けの後は釉薬を塗って本焼き。それぞれを担う職人さんの手から手へ渡る様はここで作られるバッチャン焼きの品質の良さを裏付けていた。
現在バッチャン村には100以上もの工房や店が立ち並んでいる。店先で自分の好みの器が目に入ったらまずは足を運んでみよう。お気に入りの器を探しながら古い町並みを楽しむことができるだろう。
Xã Bát Tràng(バッチャン村)
ハノイ現地オプショナルツアー
https://www.veltra.com/jp/asia/vietnam/hanoi/a/9495
ハノイの街を堪能した後はちょっと足を伸ばしてオプショナルな時間を過ごしてみては?
半日で気楽に訪れることができる小さな村々は大都会ハノイとはまた異なった趣を醸し、
まだ残る古き良きベトナムの光景に出会うことができるだろう。
写真・文/yOU(河崎夕子)
フォトグラファー。雑誌や機内誌で撮影や旅関連の執筆を行う。フォトエッセイ「酒場のおんな」発刊。http://www.youk-photo.com