写真・文/yOU(河崎夕子)
ハノイはベトナムの北部に位置する首都。ホーチミンに次ぐベトナム第二の大都市だ。近年は都市化が進んでいるが、新旧のベトナムを体感できる観光スポットもたくさん。今回はそんなハノイを拠点にして日帰りで郊外へ、まだ残る古いベトナムを体感できる村々を紹介しよう。
ハノイから西に50kmほど、車で1時間半程の郊外。SON TAY(ソンタイ)省にあるDUONG LAM(ドウォンラム)村はかつて王様をふたりも輩出した歴史的に重要な村。2005年にベトナム政府から文化遺産に、2013年にはユネスコによりベトナム初の世界複合遺産に認定された。人口8000人ほどが暮らす小さな村の歴史は15世紀に遡り、古い景観は蜂の巣状の赤土煉瓦「ラテライト」が積まれた外壁が続き、細い路地が伸びる。この村が文化認定されたことで、古い伝統家屋やそこでの生活スタイルを保存していくために、日本の大学や研究所が調査や家屋の修復などを行っていることはあまり知られていないだろう。
大きなガジュマルの木を過ぎると集落の入口となるモンフ門をくぐり、蓮池を過ぎて細い路地に入ると村散策のスタートだ。
路地をしばらく歩くと広場に出る。この前に建つモンフ亭は村の守護神を祀り、集落の集会や祭りなどが行われる村の中心地。この村出身の英雄フン・フンも祀られている。
モンフ亭前の広場にはお土産物屋さんの露店が並んでいた。ここでは木造りのおもちゃやベトナムらしいノンラー(笠)、ピスヘルメット、日本の雷おこしにも似たケオ・ダウ・フォンというお菓子などが売られていて、懐かしいお祭りの縁日を思わせる。
さらに迷路のような裏路地を歩き進むと別の広場に出る。この広場には生活品の露店が立ち並び、集落の人たちで賑わっていた。煉瓦を積み直す建設業者やワゴンを引く女性、ロンガンやカスタードアップル、ジャックフルーツなどの果物を売る行商の女性たち。この集落の暮らしが垣間見れた。
この村での食事は伝統家屋のレストランで供される家庭料理を楽しみたい。今回訪れたハー・ヒウ・テ邸の母屋は築250年の歴史を持ち、高官を輩出した家系のためとても立派な構えだった。中庭には味噌作りのかめが並び、もち米酒やバナナ、芋、トウモロコシなどの焼酎も醸造され、販売されていた。
通された食堂でのランチは予約制で、焼き鳥に焼き豚、豚肉詰め豆腐に白身魚の煮付けに空芯菜炒め、カニのスープ…と野菜もふんだんに使われた優しくて素朴な味付けは日本人の舌にもよく合う。かつて王に献上していたというミア鶏の料理も事前予約すれば食べることができる。
赤土の煉瓦の外壁に囲まれたくねくねと張り巡らされる裏路地を歩きながら、村の歴史を感じる半日間。特に観光用に整える必要のないありのままのベトナムの田舎の暮らしを五感で感じ取ることができるドゥオンラム村。まるで映画のセットのような原風景は、発展の続くベトナムだからこそ、これから注目される観光スポットとなるだろう。是非カメラを片手に訪れたい。
DUONG LAM
(ドゥオンラム古村遺跡観光ガイド案内所)
Diem Lien He Huong Dan Tham Quan Di Tich Lang Co Duong Lam
住所:Nha Xich Hau, Dinh Mong Phu, Duong Lam Commune, Son Tay Dist., Hanoi
電話:0168 640 9632
営業時間:(月~金曜)7:30~11:30 / 13:30~16:30
(土・日曜・祝日)7:30~11:30 / 13:30~17:30
ガイド料:10万VND(約480円)/2時間
アクセス:ハノイ中心部から西へ約50km、車で1時間強。路線バス利用の場合、
キムマー(Kim Ma)バスターミナルから201番でソンタイ(Son Tay)バスターミナルへ行き、さらにタクシーで約10分。
「スケッチトラベルハノイ・アオザイツアーデスク」では、日本語ガイド付き日帰りツアー (45US$/1人~)を催行している。
写真・文/yOU(河崎夕子)
フォトグラファー。雑誌や機内誌で撮影や旅関連の執筆を行う。フォトエッセイ「酒場のおんな」発刊。http://www.youk-photo.com