取材・文・写真/白石あづさ
林芙美子の小説「浮雲」にも登場する、ベトナムのダラット。フランスの植民地時代に開発されたこの標高約1500メートルの高原の街は、新婚旅行先として人気が高い。
数回にわたってダラットの魅力をお伝えするこの連載、第1回目は、かつて迎賓館として使われていた建物をリニューアルしたホテル『ダレット・パレス』を紹介する。
■涼しいダラットまでは1時間
ベトナム旅行というと、ホーチミンやハノイの周辺を見て帰ってしまう人が多い。しかし、ちょっと足を伸ばせば大都市とは違うベトナムの魅力がある。
なかでもベトナム人に人気が高い避暑地ダラットは、ちょうど日本の軽井沢のように涼しく、観光資源も豊富にある。
成田からダラットまで行く場合、一度ホーチミンで飛行機を乗り継ぐことになるが、もっとも接続がよいのがベトナム航空だ。朝、成田を出発しその日の夜までにはダラットの空港に到着できる。ただし乗り換え時間が非常にタイトなので、心配な人はホーチミンに一泊し、街を散策してもいいだろう。ホーチミンからダラット空港までは、飛行機で約1時間だ。
■憧れのダラット・パレスに泊まる
空港からダラットの街へは車で約1時間。フランス植民地時代に建てられた建物が多く残っているが、この街で一番有名なホテルが、約100年の歴史を持つフレンチコロニアルスタイルの館『ダラット・パレス』だ。
街の中心街から少し離れたところにある人造湖、スアンフォーン湖を見下ろす高台に黄色の3階建ての建物が見えてくる。
かつて迎賓館として世界各国からの要人を迎え入れていた雰囲気そのままに、館の入り口の天井は高く木製のカウンターや大きなシャンデリアが優雅な雰囲気を醸し出している。
入口の横にはレストランのテラスがあり、湖を眺めながらお茶やお菓子をいただける。さりげなくホテルの名前が書かれたクラッシックカーが止まっていて、一瞬、100年前にタイムスリップしたかのような気分になる。
ギシギシと音のする木の階段を上がって客室に入ると、天井の高い部屋に真っ赤な絨毯が敷かれ、手入れが行き届いたアンティークの家具や美しい絵画に目を奪われる。
ライティングディスクが置かれた部屋の奥には天蓋付きのベッドとソファが置かれており、広々としている。
ウエルカム・スイーツは、ホテルのパティシエが作った色とりどりのチョコレート。花の文様が描かれたタイルが美しく、猫足のバスタブがかわいいバスルームの隣には、4畳ほどのウオークインクローゼットがあり、どれほど荷物を持ってきても入りきらないことはなさそうだ。
■ベトナムで堪能するフレンチ
さっそく1階のフレンチレストランへ。せっかくベトナムに来たならベトナム料理を食べたいという人もいるだろう。しかし、ベトナムのフレンチのレベルは驚くほど高い。そして値段も日本に比べて安いので、ぜひ一度は堪能してほしい。
朝食は、アメリカンブレックファストや、ベトナムの典型的な朝食であるフォーなど数種類から選ぶことができる。朝焼けの美しい空を見ながら、テラスでいただく朝食は忘れられないひとときになるだろう。
ホテルには、スパやゴルフ場が併設されているので、ぜひ連泊をおすすめしたい。
【ダラット パレス ラグジュアリー ホテル & ゴルフ クラブ】
(Dalat Palace Luxury Hotel & Golf Club)
■所在地/12 Tran Phu Street, Da Lat City, Vietnam
■電話/(84-63)3825 444
www.dalatpalace.vn/
次回はダラットの郊外のみどころをまとめてご紹介しよう。
取材・文・写真/白石あづさ
旅ライター。地域紙の記者を経て、約3年間の世界旅行へ。帰国後フリーに。著書に旅先で遭遇した変なおじさんたちを取り上げた『世界のへんなおじさん』(小学館)。最近は世界中で食べた珍しい動物の肉を取り上げた『