ゆるやかな高原の街、ダラット。ほんの少し郊外に出れば、景色のよい山並みが広がり、渓谷が点在している。今回は、人気レストランの「ダラットハウス」に立ち寄りながら、ダラットの街並みが見渡せるケーブルカーや竹林禅院、トゥイェンラム湖など南の景勝地を巡る。
■まずは人気のローカルレストランで腹ごしらえ
ダラットの南にケーブルカーに乗ってお参りする寺院があるというので、ダラットの街並みも見てみたいと、ホテルをのんびり出発した。しかし、寺院にレストランがあるかどうか分からないので、途中、地元の人に人気があるレストラン「ダラットハウス」にて腹ごしらえ。
高原らしい西洋風のかわいらしい二階建てに花が咲き乱れる庭園。テラス席もあり、おめかしをした家族連れでにぎわっている。建物のなかにはいると、日本人にとってはド派手な店内だが、清潔でスタッフの感じもいい。
高原野菜の栽培や牧畜が盛んなダラットでは、肉料理も野菜料理も手頃な値段で食べられる。まずは、採れたて新鮮なハーブやレタスをテーブルにドーンと置いてくれた。
つまんでいるうちに、「はい、パンケーキ」と店員さんが運んできたのが、エビ入りの卵焼きのような見た目。これは「バインセオ」というベトナムの米粉で作ったお好み焼きらしい。
お店によってはパリパリしているそうだが、こちらはどちらかというと、もっちりして日本人好み。味付けはしてあるが、ピリ辛ソースをつけていただくとよりおいしい。
コースの最後にダラットハウス自慢の魚介鍋が出てきたが、これがまた日本人の口に合う。小イカやエビ、つみれ、そして細い麺が入っているが、これはフォーよりも細いブンという麺なのだそうだ。
ベトナム料理は辛さを自分で調節できるので、タイのように辛い料理が苦手な人にもおすすめできる。
それにしてもなぜ高原で魚介鍋?と不思議に思ったが、南北に長いベトナムでは、どの地域も南シナ海に近く、高原のダラットでも70,80キロ先は海。鮮度はさほど落ちないようだ。
■空中散歩を楽しみながら寺院へ
お腹がいっぱいになったらケーブルカー目指して出発。乗り場自体が山の上にあり、車で坂道を上がっていくと、ケーブルカーに乗る前からダラットの街が一望できる。
東京の高尾山や御岳山のように山肌にそって上り下りする小型車両のようなものを想像していたら、箱根ロープウェイのように山と山をつなぐ空中散歩であった。
ちょうど私が訪れた時は、雲行きがどんどん怪しくポツポツと雨が降ってきたが、20分の空中散歩は快適そのもの。のどかな田園風景が広がり、どことなく日本の田舎に似ているのでほっとする。
ケーブルカーから降りると、ダラットの街が一望できる。
ここから「竹林禅院」(Thien Vien Truc Lam)までは歩いてすぐだ。
ベトナムにはキリスト教や新興宗教などさまざまな宗教が共存しているが、一番、多いのが仏教徒である。自然豊かな竹林禅院はダラット最大の敷地を持つ寺だが、寺院は新しく、きれいに手入れされた石畳や芝生が美しい。
袈裟を着た僧侶がお経をあげていることもあるので静かに参拝したい。
竹林禅院から、森のなかを歩いていくと、木々の間から人口湖であるトゥイェンラム湖が見えてきた。人口湖ながら、緑に囲まれて気持ちがいい。せっかくボートも売店もあるので、ここで一休みしたいなあ…と思ったが、雨雲が厚く雨がやみそうにない。
普段なら、家族連れやカップルで賑わっているそうだが、今日は静まり返っている。高原だが、いつでもカラッと晴れているわけではないようだ。天気も変わりやすいので、朝、天気がよくても雨具は忘れずに持参したい。
さて次回は湖からほど近いダタンラ滝とスリル満点の森林コースターを紹介します。
取材・文/白石あづさ
旅ライター。地域紙の記者を経て、約3年間の世界旅行へ。帰国後フリーに。著書に旅先で遭遇した変なおじさんたちを取り上げた『世界のへんなおじさん』(小学館)。最近は世界中で食べた珍しい動物の肉を取り上げた『