取材・文/関屋淳子

オーストリアの首都・ウィーンは芸術の都、音楽の都と称されます。サライ世代には人気の旅行先ですが、まだまだ知られていない素晴らしい食文化があります。

そこで3回にわたって、ウィーン商工会議所により「ウィーンプロダクツ」の称号を与えられた企業が、歴史や伝統製法を守りながら築いてきた、ウィーンならではの食の世界をご紹介します。

今回は、甘いものに目がないウィーン子お墨付きのスイーツです。

■1:皇妃エリザベートが好んだ「スミレの砂糖漬け」

中世から20世紀初頭まで、中部ヨーロッパで強大な勢力を誇ったハプスブルク家。なかでも政略結婚を進め、自身も16人の子供を産んだ女帝マリア・テレジアは、よく知られるところです。

そんなマリア・テレジアは、今年でちょうど生誕300年。市内にある銅像も、心なしか誇らしげです。

ウィーン市内に立つマリア・テレジア像

ウィーン帝室御用達菓子店として知られるのが『ゲルストナー(Gerstner)』です。創業は1847年、繊細な砂糖細工の菓子が評判になり、瞬く間にウィーン子を虜にしました。

なかでも「シシー」の愛称で知られる皇妃エリザベートが好んだのが、「スミレの砂糖漬け」。春に収穫したスミレの花をよく洗い、乾燥させて、アカシアの蜂蜜と砂糖でつけたもの。砂糖に薄く覆われたスミレの花びらはなんとも上品な味です。

ほかにも伝統的な「ドボシュトルテ」、2年前に発案された「シシートルテ」などのケーキも揃い、オペラ座を目の前にする店内は甘い香りに包まれています。

店内にはカフェだけではなくレストランもあり、優雅なサロン文化も体験できます。

写真右がスミレの砂糖漬け

ゲルストナー店内のカフェ

レストランからはオペラ座がよく見える

■2:皇帝が愛した素朴な焼き菓子「クグロフ」

そしてシシーの夫君である皇帝フランツ・ヨゼフが愛した菓子が「クグロフ」です。オーストリアのクリスマスには欠かせないもので、小麦粉と卵黄、メレンゲ、砂糖、赤ワイン、シナモンなどを加えて焼き上げた菓子です。

オペラ座近くにある『グランドホテルウィーン(Grand Hotel Wien)』では、120ものレシピの中から試行錯誤し作られたオリジナルの「グランドクグロフ」がいただけます。シナモンの香りとほんのりとした甘さは、ママンの味という感じです。日持ちもしますのでお土産にも最適です。

クグロフ。奥の小さいサイズのものは客室のサービス品

同ホテルは2006年まで「全日空ホテル」だったということもあり、1階には気軽な寿司店、最上階には本格和食店が入り、さらに朝食ブッフェでは焼き鮭や納豆も供され、日本人宿泊客にも人気です。ホテル屋上では養蜂もしていて、その蜂蜜もウィーンプロダクツに認定されています。

本格和食と鉄板焼きが楽しめる「雲海」

■3:ウィーン子が愛してやまないチョコレート

ウィーンの街中を歩くと、チョコレート店が多いことに気付きます。チョコレートはウィーン子お気に入りのスイーツのひとつなのです。

なかでも1953年創業の『ハインドル(Heindl)』は40軒の店舗をもち、フェアトレードの良質のカカオを使った高品質のチョコレート製造会社として知られています。

そのチョコレート博物館を訪ねてみました。館内ではチョコレート製造の工程や資料などが展示され、試食もたっぷりできます。ヌガーやウエハースを使ったものなど種類も様々で、秋に販売されるマロンのチョコレートが一番人気だそうです。

スタッフの方が愛情を込めて作ったチョコレートは、カカオ本来の美味しさと心を癒す甘さです。

ハインドルのチョコレート製造所

ショップには様々なチョコレート商品が並ぶ

■4:お土産にもおすすめの伝統的なキャンディ

市街中心部、ホーフブルク王宮の近くにあるキャンディショップ『ツッカールヴェルクシュタット(Zuckerlwerkstatt)』は、2013年にオープンした飴細工のお店です。飴細工はいわゆる日本でいう金太郎飴なのですが、色遣いやデザインがとてもキュートで、女性へのお土産におすすめです。

その製法とレシピは1890年に確立されたもので、伝統的な飴作りを再現したそうです。店内では鉄板の上で若いスタッフが飴を練り上げ、カットする作業も見ることができます。

オリジナルの注文も可能で、例えば販促用に企業のロゴを入れた飴を注文する会社が多いとか。さらりとすっきりとした甘さの飴は、瓶入りやロリポップ(棒付き)などがあります。

ツッカールヴェルクシュタット店内の作業風景

可愛いキャンディ

■5:果実の滋味がぎっしりのジャム

ジャムとピクルスを販売する『シュタウト(STAUD’S)』は、もともと果物の卸商を行ない、のちに加工品の販売を始め、現在は200種類ほどのジャムを揃えています。

ジャムの原料は果実、ペクチン、砂糖、レモン果汁のみ。保存料・着色料は一切使用していません。果実は契約農家で有機栽培されたものだけを使用。例えばアプリコット(杏)はドナウ川沿いの畑で収穫されたものだそうです。新鮮な状態で運ばれた果実は、いったん凍らせることで豊かな香りを保持させているとのこと。

砂糖を使わないものもあり、ジャムは果実そのものを食べているよう。新製品は果実とチョコレートを組み合わせたジャム。パンとの相性もよさそうです。

シュタウト本店

チョコレート入りの新製品。

シュタウトの商品は市内のスーパーでも購入できますが、ブルンネン市場近くにある本店はとにかく種類が豊富で、試食しながら選べます。

日本人スタッフの渡辺さんもお待ちしてます。

*  *  *

以上、今回は甘いものに目がないウィーン子お墨付きのスイーツとジャムをご紹介しました。次回はウィーン郊外で養殖されているエスカルゴをご紹介します!

取材協力/
ウィーン商工会議所
http://www.wienproducts.at/?lang=ja

オーストリア大使館商務部
http://www.advantageaustria.org/jp/

◎取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。

 

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