秘境路線の秘境駅・豊ヶ岡は、1960年に新設された駅。

誰も乗る人などいないのだろう、と思っていたら、お客さんが一名。

ホームから離れたところに小さな待合室が建っている。駅が開業したころから立っているらしい。林に囲まれたシチュエーションから秘境駅といわれるが、それでもまだこの区間は、一日6往復の列車が走っている。

ディーゼルカーは麦畑、田園、野菜畑の間を北上する。ほとんど乗降はないが、ときおりお客さんがやってくる。

9時28分、定刻に新十津川到着。列車が入り、一日数十分だけの賑わいを見せる。駅周辺にはあちこちに地元の人が丹精した花畑が広がる。季節の花が精いっぱいの装いで、遠来の客を迎えてくれる。

新十津川駅舎。かつては有人駅だっただけに小さいながらも駅事務室のスペースがある。

時刻表には、1日一本だけの列車が記されている。駅前には、地元のボランティアが建てたらしい「顔だし看板」が立てられていた。

駅前に作られたお土産屋さん。ゆっくり眺めていると時間が足りなくなるほどの品物が並んでいる。廃止が決定するとあっという間に売り切れてしまいそうだ。店内にはイスとテーブルも準備され、コーヒーなども飲むことができる。

売店から駅に戻ると、ホームはずいぶん賑やかなことになっていた。

新十津川駅の近くの病院に付属する保育園からのお客さんだ。駅のすぐ近くに位置して、以前から列車が着くときのお出迎えやお見送りをしてくれている。

今日はみんなそろっての体験乗車らしい。

みんなやたら元気で、一瞬たりとも止まらない。ディーゼルカーもさっきまでと違って、少々くすぐったそうに見えた。

「あのね、おっきなナントカが、ナントカになってナントカなんだー」「あのね、ぼくはOOが好き」

次々一生懸命話しかけてくれる。

でも、ごめん!内容を何も覚えていない。

車内にあふれかえったのは、「今」と「未来」しかないエネルギーの集団。もう、相槌を打つだけで精一杯なのだ。

彼らは本来なら、きっと未来のお客様なのだろう。だけど、この鉄道がそのときまで待ってくれるかどうかは判らない。

未来が見えない鉄道に、未来がいっぱいのお客さんが乗っていた。本日限定の絶景だ。

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