実録「青春18きっぷ」で行けるJR北海道全線の旅：３日目《札幌から新得へ》
青春18きっぷのルールでは、普通列車が走っていない新夕張～新得の自由席を乗車する場合に限り青春18きっぷを利用することができる。しかも特別料金なしである。国鉄時代に作られた特例だが、現在も有効だ。ただし、新夕張と新得の両方に停車する列車でないと利用不可能。はみ出る区間も乗車する場合は、特例は一切消滅し、特急に乗る全区間の乗車券と特急券が必要になる。
今回乗り継ぐのは16:54発の帯広行き「スーパーとかち5」号。４両編成の白い車両が定刻に入ってきた。新得まで約一時間の高速移動である。
占冠を過ぎたあたりで、列車が突然停車した。しばらくすると「さきほど鹿と衝突したもようです。ただいま状況を調べております」という案内放送。鹿が線路の上に現れるのはいつものことだが、よけ切れないと衝突してしまう。しかももちろん大変なのだが、ブレーキなどの配管がやられると長時間の停車となることもある。それを覚悟した人たちがあちこちで「到着が遅れるかもしれない」を連絡し始め、自分も長時間の停車を覚悟する。
列車本数の少ないところでこういうトラブルがあったら、乗り継ぎに間に合わない可能性もある。そのため今回は「スケジュールが維持できないときは、一回だけ特急列車を利用して日程調整ができる」というワガママルールを忍び込ませているのだが、この状況では使うに使えない。まさか特急利用中に鹿と列車が衝突するとは思わなかった。
さいわい鹿は逃げおおせることができたのか、列車は数分で再び発車。新得にはほぼ定刻に到着した。さすがに特急列車、90㎞ほどの山道を1時間ほどで走り切った。
新得駅の売店はまだ営業中。じもとの商工会がやっているらしく、地場産品が並んでいるのがうれしい。
駅前には代行バスのバス停。明日はここから一番のバスで富良野方面へ向かう。
新得と言えばそばの町。駅前の食堂に入り夕食にそばをいただく。がっしりとした食感がたまらない
そばを食べ終えて、外に出たら、新得駅が光っていた。この駅は夕暮れが美しい。モダンな駅と適度にライトアップされた壁面、そして背景の空の色。季節や自国で印象は毎回異なるが、こちらも絶景候補にしておこう。《４日目に続く！》
【３日目乗車区間】
札幌―石狩当別―新十津川―北海道医療大学―桑園 札幌―千歳―夕張―新得（函館本線 札沼線 函館本線 千歳線 石勝線）
文・写真／川井聡
昭和34年、大阪府生まれ。鉄道カメラマン。鉄道はただ「撮る」ものではなく「乗って撮る」ものであると、人との出会いや旅をテーマにした作品を発表している。著書に『汽車旅』シリーズ（昭文社など）ほか多数。
