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旅行

大分・耶馬溪探勝の基点「中津」の料亭と見どころ【天下の奇勝・耶馬溪を遊覧する2】(大分県中津市玖珠町)

取材・文/関屋淳子

大分県の北西端、中津市と玖珠(くす)町にまたがる広大な景勝地・耶馬渓(やばけい)。この歴史や文化を語るストーリー「やばけい遊覧~大地に描いた山水絵巻の道をゆく~」が平成29年、文化庁の日本遺産に認定されました。

およそ200年前に、思想家の頼山陽が名付けた「耶馬渓」。この天下の奇勝を取り巻く歴史的魅力と地域の文化をご紹介します。今回は、耶馬渓探勝の起点となる中津市についてご紹介します。

*  *  *

古来、文人や画人を惹きつけてきた耶馬渓。大正時代には中津駅周辺には料亭が立ち並び、多くの観光客が集いました。そんな中津の料亭文化を今に伝えているのが「筑紫亭(ちくしてい)」です。

筑紫亭の客間

明治34年(1901)創業、数寄屋造りの歴史ある建物は国の登録有形文化財で、中庭を囲むように母屋と離れがあります。

中津出身の福沢諭吉の書簡が残り、一室の柱には宇佐航空隊の特攻隊がつけた刀傷を見ることができるなど、随所に歴史の息吹を感じます。

柱の刀傷

筑紫亭では8年ほど前から定期的にクラシックなどの演奏会を行なっています。女将の土生(はぶ)かおるさんは、「中津は福沢諭吉や、解体新書に関わった前野良沢など、近代国家を切り開いた多くの偉人を輩出しました。大分県の北の中心地であり、料亭が文化発信の役割を担ってきました。それを絶やさないように、自然が育む地産地消のお料理とおもてなしの気持ちで、演奏会を開催しています」と話します。

女将の土生かおるさん

大分市出身のヴァイオリニスト・朝来佳一さんと中津市で活躍するボーイソプラノの倉迫諄くんのコンサート。

風情ある佇まいの中で聞く美しいバイオリンの音色と澄み渡るボーイソプラノの声、なんとも優雅な時間が流れます。

筑紫亭自慢の料理といえば、鱧のしゃぶしゃぶです。関西では夏の魚のイメージがある鱧ですが、豊前海で獲れる真鱧は身も骨も柔らかく、年間を通して楽しめます。

新鮮な鱧は骨切りをして鰹と昆布の出汁にくぐらせて、地元特産の柑橘類のポン酢でいただきます。弾力ある食感と独特の甘みと味わいがある鱧と、酸味のきいたポン酢がよく合います。

筑紫亭の鱧のしゃぶしゃぶ

お料理はほかに前菜にこのわたやからすみ、椀物に宇佐産くちこを用いるなど趣向を凝らした特別料理。さらにデザートは江戸時代に考案された名物の巻蒸(けんちん)。これは白大豆をキクラゲなどと共に濃い口醤油と砂糖で煮込み、葛で固めて冷やしたもの。ういろうや羊羹に似た味で、ほどよい甘さの蒸し菓子なのですが、キクラゲが入っているのがなんとも不思議です。

筑紫亭の料理

【筑紫亭】
大分県中津市枝町1692 電話:0979-22-3441
営業時間:12時~13時30分、18時~20時30分
要予約

*  *  *

さて、中津には戦国時代に豊臣秀吉の側近・黒田官兵衛こと黒田孝高が築城したという中津城の城下町の顔もあります。城跡には模擬天守が立ちますが、石垣が往時を偲ばせます。

城下町は江戸時代に使われていた「姫路町」「京町」などの町名が現在も残り、武家屋敷跡や寺社が点在しています。「村上医家史料館」は寛永17年(1640)に医院を開業以来、現在に至るまで医家として継続、数1000点におよぶ医学関係の資料などが残されています。杉田玄白とともに『解体新書』を著した中津藩医・前野良沢の書や、蘭日辞書、薬を煎じる道具・薬研、薬瓶などがあり、ちょっとレトロな空間です。

 

村上医家史料館

館内展示物

赤壁が目を引く「合元寺」は、黒田孝高が前領主を暗殺した際、その従臣らがこの寺を拠点に奮戦し最後をとげたところ。以来門前の白壁は幾度塗り替えても血痕が絶えないので、ついに赤色に塗り替えられるようになったという逸話を持つ古刹です。寺の大黒柱には刀の切り痕が残っています。

合元寺

以上、今回は耶馬溪観光の基点となる中津市の見どころをご紹介しました。中津市内には、ほかにも福沢諭吉旧居や歴史民俗資料館などがあります。のんびり散策するのが楽しい町です。

次回は、耶馬渓の南、玖珠町側からの「やばけい遊覧」をご案内しましょう。お楽しみに。

※日本遺産「やばけい遊覧」についての問い合わせ先:
中津市教育委員会文化財室(電話:0979-22-1111)

取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。

撮影/yOU(河崎夕子)  www.youk-photo.com

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