取材・文/関屋淳子

富山県と県内13市町では、年に2回、体験型観光プログラム「大人の遊び、33の富山旅。」を展開しています。いま開催中のテーマは「Beautiful Life アート&クラフトスペシャル」。手作り体験を通して、新たな富山の魅力を感じられるプログラムが体験できます。

今回ご紹介するのは、市内の美術館を巡るスタンプ・アート企画と、そして古本屋で体験できる小冊子「ZINE」作りと「大人の塗り絵」です。美味しい立ち寄りスポットもご紹介します。

美術館を巡りつつスタンプアートを完成させる

さて、個性的な美術館が点在するアートの街・富山市では、美術館を巡りながら「アート・ブック」にスタンプを押して完成させるというプログラムが実施されています。

対象となる美術館は、富山市ガラス美術館、樂翠亭(らくすいてい)美術館、富山市篁牛人(たかむらぎゅうじん)記念美術館、森記念秋水美術館、ガルリ・ミレーの5館。いずれかの美術館で「アート・ブック」を入手(無料)すれば、各館に設置されたスタンプを使って、スタンプ・アートブックづくりが楽しめます。

各美術館に設置されているスタンプを押していく

まず訪ねたのは、森記念秋水美術館。こちらでは、ある製薬会社の会長が蒐集した重要文化財や重要美術品を含む日本刀コレクションが鑑賞できます。名称の「秋水」は、曇りのない研ぎ澄まされた日本刀を意味するとか。「正宗」や「村正」など聞き覚えがある名刀の数々は、圧巻です。

森記念秋水美術館外観

展示室

近年、「刀剣女子」という言葉が生まれたように、日本刀にはまる女性が増えています。なるほど、日本刀はその形や地鉄(じがね)、刃文(はもん)を鑑賞すれば、いつまでも見飽きることなく、もっと知識を増やしたいと思わずにはいられません。

「正宗」の脇差

美術館入り口には鍔(つば)のカプセルトイの販売機もありました。玩具とはいえ、サライ世代の大人も思わず手が伸びることでしょう。

鍔のガチャガチャ

【森記念秋水美術館】
富山県富山市千石町1-3-6
電話:076-425-5700

*  *  *

さて、次なるは樂翠亭美術館です。こちらは、木造2階建て純和風建築と、鉄筋コンクリート造の洋館、そして土蔵造りの蔵からなる、昭和初期の富山市を代表する邸宅をアートスペースにした美術館。贅を尽くした数寄屋建築の美を楽しみ、畳の上や床の間、書院棚、回廊の角などに無造作に置かれている作品を楽しみます。

展示作品は、人間国宝の陶磁器から前衛作家のオブジェまで様々。またよく手入れされた日本庭園もあり、ここが自分の別宅だったら……と妄想してしまいます。何度訪ねても心が落ち着く美術館です。

樂翠亭美術館内観

各美術館にはそれぞれ異なるスタンプが設置されているので、5館を巡りスタンプ・アートが楽しめます。

【樂翠亭美術館】
富山県富山市奥田新町2-27
電話:076-439-2200

童心に帰って手作り感を楽しむ

さて富山駅に戻って、あいの風とやま鉄道で約13分。富山市の西、射水市の小杉駅周辺は、鏝絵(こてえ)の街として知られています。

ここに大正時代の郵便局を改装した「LETTER」(レター)という新しい文化施設があります。1階が古本屋の「ひらすま書房」、2階はアトリエスペースとして使われています。オーナー独自の視点でそろえた古書のほか、普段本を読まない人に本を手に取ってほしいと小さな出版社が発行する個性的な新刊も取り扱っています。

こちらで体験できるのは「ZINE」(ジン)と呼ばれるオリジナルの小冊子づくり。古雑誌の気に入ったページの写真や文字、イラストなどをコラージュし、マスキングテープやスタンプなども多用して表紙を作り、中面に無地紙を入れてステープラーで留めて、製本します。

センスが問われるこの体験、今回の参加者5人の完成品を見ると、それぞれ個性的に仕上がっていました。妙に懐かしい、手作り感たっぷりの体験でした。このZINEづくりは、2018年5月31日のプログラム終了後も気軽に楽しみたい人が集まれるようにしたいとのこと。ご興味あれば、ぜひ問い合わせてみてください。

LETTER外観

1階のひらすま書房

ZINEづくり

参加者の完成品

【ひらすま書房】
富山県射水市戸破6360
電話:080-4251-0424
ZINEづくり200円 予約不要

*  *  *

さて、富山新港から射水の新湊を西へ流れる運河・内川は、漁船が停泊し民家が軒を連ねる様子から「日本のベニス」ともいわれる地区です。スペイン人建築家が建てた赤い東橋や映画のロケ地跡も残り、のんびり散策したいところです。

内川沿い

ここの東橋近くにあるのが、築70年以上の古民家を再生した「カフェ uchikawa 六角堂」。オーガニックコーヒーやサンドウィッチ、スイーツなどが自慢の店です。13歳未満は入店できないこともあり、店内は静かで落ち着いています。もともと畳屋さんだったということで、当時をしのぶ機械がトイレに展示されています。

六角堂と赤い東橋

店内

ここで体験できるのは、大人の塗り絵(無料)。内川散策のあと、まったりとした気分で72色の色鉛筆片手に、ゆるやかな時間が過ごせます。

大人の塗り絵

クリームブリュレなどのスイーツも充実

【カフェ uchikawa 六角堂】
富山県射水市八幡町1-20-3
電話:0766-30-2924

*  *  *

ここで立ち寄りグルメ情報を。富山市一番町にある「寿司正」さんは、富山湾寿司が味わえる鮨屋さんです。

富山湾寿司は、富山湾で水揚げされた魚と県産の米を使って提供するお寿司のこと。1セット10貫と汁もの付きで2000円~3500円、県内の55店舗で提供されています。天然の生け簀と称される富山湾で獲れたキトキトの旬の味覚を存分に味わえるので、富山は初めてという方にも、ちょうどいいですね。

寿司正の富山湾寿司(ガラスの器は富山県の形をしている)

今回は「寿司正」で富山湾寿司を堪能しました。鰤、アオリイカ、甘エビ、真鱈の昆布締め、マイワシ、炙りカマス、白エビ、カサゴ、紅ズワイガニ、バイガイ。これで2500円というお得感。さらに事前予約ではもう一品ということで、茶碗蒸しも付きました。

6月ごろまでは蛍烏賊、夏からはノドグロが旬となります。季節を変えて、折々の鮮魚を楽しみたくなります。

【寿司正】
富山県富山市一番町4-29
電話:076-421-3860

*  *  *

以上、今回はアート&クラフトが楽しめる富山の知られざるアクティビティとスポットをご紹介しました。見るだけではなく実際に体験することで創造の世界が広がりますね。次回はさらなる手作り体験をご紹介します。

※今回ご紹介した体験プログラムは2018年5月31日までです。詳しくは「大人の遊び、33の富山旅。」のウェブサイトをご覧ください。

取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。

 

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