《8日目》奥津軽いまべつ駅~ 木古内駅
北海道最南端の駅、と掲げられた木古内駅。国鉄からJRを経て、今は新幹線と在来線部分で二つに分かれている。新幹線の開業とともに在来線は第三セクター「道南いさりび鉄道」となり、駅は実質的に無人となって、売店も消えた。
木古内で宿泊をしたかったのだが、オプション券の有効期間は一日。その日のうちに乗り継がないと無効になるというシステム。なので、このまま函館へ向かう。乗り継ぎの待ち時間は一時間。夕暮れの跨線橋で折り返し列車が来るのを待つ。
《8日目》木古内駅~函館駅
入ってきたのは観光列車「ながまれ」号。この鉄道が改造したチャーター用車両だ。チャータートレイン以外は普通列車として運用されているとは聞いていたが、予期せぬ出会い。これは嬉しい。2両編成の列車だったが「ながまれ」号に乗り込む。
ヘッドレストや大漁旗、食事用テーブルが取り付けられているというコトで、かなり期待をしたのだが、一部にシールが貼られている以外は他の車両とまるで同じ。
じつは観光列車の装飾はすべて着脱可能になっていた。少ない車両を使い回す、なかなか見事なシステムだ。
夕暮れの津軽海峡を見ながら函館を目指す。指宿枕崎線で見た東シナ海・鹿児島湾からいくつ目の海だろう。
併走する松前国道を走る車のライトが紅く輝く。この区間を乗車するのも、夜行列車が姿を消して以来初めて。
きょうは乗客がいないのが少し物足りない。
木古内からぴったり一時間で函館駅に到着。海峡を越える道のりはすっかり様変わりしてしまったが、函館駅の空気は今も変わらない。
明日は函館本線をひたすら北上する予定だ。
【実録「青春18きっぷ」で行ける日本縦断列車旅】
※ 1日目《枕崎駅~熊本駅》
※ 2日目《熊本駅~宮島口駅》
※ 3日目《宮島口駅~名古屋駅》
※ 4日目《名古屋駅〜戸狩野沢駅》
※ 5日目《戸狩野沢温泉駅~只見駅》
※ 6日目《只見駅~鶴岡駅》
※ 7日目《鶴岡駅~ウェスパ椿山駅》
※8日目《ウェスパ椿山駅~函館駅》
※9日目《函館駅~旭川駅》
文・写真/川井聡
昭和34年、大阪府生まれ。鉄道カメラマン。鉄道はただ「撮る」ものではなく「乗って撮る」ものであると、人との出会いや旅をテーマにした作品を発表している。著書に『汽車旅』シリーズ(昭文社など)ほか多数。