《8日目》弘前駅~青森駅

弘前駅に到着。折り返しは鰺ヶ沢行きになるので、行き先表示板の交換作業。いまならLED表示だからボタン一発で転換できるが、このキハ40系は客車時代の伝統を受け継いで「サボ」。何キロもあるホーロー板を何枚も抱え交換していく。

交換作業は慣れた手つきでサクサク進んでいくが、けっこう危険なのだ。素手で進めてテッパンの間に指を挟んでしまうと簡単にチマメができるほど痛い。

弘前駅の構内跨線橋には「リゾートしらかみ・橅」が置かれていた。自由に運転席に入ることもできる。どうやらJRの人が作ったらしく、運転台など細部の再現もなかなかリアルだった。

弘前発青森行きは、昨日と同じ「走ルンです」こと701系。

「見渡しがいい」車内の風通しがいい」のは「走ルンです」の特徴だ。その分冬はちょっと寒い。

岩木山が青空に浮かぶ。山を眺めていると、山に見守られているような気持ちになる。

そして青森駅に到着。

弘前藩以来の歴史を持つ弘前市と、鉄道と連絡線で発展した青森市は、微妙なライバル関係。青森駅が担ってきたのは本州と北海道を結ぶゲートウエイの役割だ。

その青森駅のホームには、出発先ごとの信号が設置されている。すでに「東京」や「福島」まで直通する定期列車は姿を消したが、列車の行き先方面表示としては今も大切な役割を負っているようだ。

乗り換えの時間を利用して、駅前を散歩する。訪れるのは青函連絡線時代から愛用してきた「駅前珈琲店」。海峡を越える儀式のように、いつもここで休んでから船に乗った。

青函トンネルが開通してからは直通してしまうことが多くなり、自然と訪れる回数は減ってしまったが、店のなかは何十年前と変わらない。ねぶた好きの先代が書いた毛筆のメニュー表も珈琲の味も昔のまま。先代が愛したねぶた絵も健在だった。

《8日目》青森駅~津軽二股駅

青森駅舎は昔のまま、かつてリンゴ市場が並んでいたところには商業ビルが建っている。

青森駅のお土産屋さんの片隅にあるおせんべい屋さん。ナッツや木の実を入れた手焼き南部せんべいが次々焼き上がって行く。香ばしさと木の実の味がマッチして、お土産用に買ってもつい自分で食べてしまうと言う、少し困った逸品である。

青函連絡船輸送のピークは昭和40年代。混雑する船のなかでスペースを確保するのは先着順の競争だった。列車から降りて船に向かう北側の桟橋は、通称「マラソン桟橋」と呼ばれていた。

改札口からホームに向かう南側の跨線橋は、青函連絡船時代とほぼ変わらない。ただ、ホームの北側にあった連絡船乗船用の跨線橋はすでに撤去されている。

通常、新幹線で北海道に行くなら、新青森で北海道新幹線に乗り換えるのだが、「青春18きっぷ」で行く旅なら、津軽線の津軽二股駅まで行って、そこから北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅まで歩くことになる。

せっかく今朝はウェスパ椿山駅まで戻って乗ったのだが、鉄道の路線をつないでいくコースとしては、ここで一旦切れてしまう。二つの駅の間の距離は数十メートル、改札口を経由しても数百メートルの距離である。どうせなら同じ駅の扱いにしてくれればいろいろと助かるのだが……。

今後のコースは、青森から津軽線で津軽二股まで、そこから隣接する奥津軽いまべつまで一駅歩き。北海道新幹線「はやぶさ」で青函トンネルを抜け北海道木古内に入る。ただし、それぞれの駅で長い待合時間が付いてくるという、途中下車ファンには実にありがたいというか、なんというか……ともかく時間のかかる行程ではある。

北側の壁面には連絡船の写真が貼られていた

津軽線の列車は殆どが蟹田行きの電車だが、一日一往復だけ青森~三厩直通する列車がある。今回は青森13:06発の三厩行き列車に運良く接続……とは言っても青森駅で1時間20分以上の待ち合わせだったが。

最初の停車駅、油川で非常事態発生。駅の先の踏切付近で緊急停止信号が出たため、発車ができなくなってしまったのだ。これまで殆どトラブルなしで来たが、今回は少しばかり長期戦になった。

結局、踏切まで運転士が安全確認に赴いて安全確認。抑止時間は15分ほどだったろうか。

蟹田駅の手前では、右手の車窓に陸奥湾が広がる。対岸には下北半島も姿を見せていた。

蟹田駅のホーム。「蟹田ってのは、風の町だね」と木の板に黒々と書かれた太宰治の文学碑が待っていた。今日は「青空とそよ風の町」である。

ここから先は津軽線の非電化区間。列車の本数は半減する。

蟹田を過ぎると通学生が降りて、車内はほぼ数人の貸し切り状態になった。

中小国~大平の間で、列車の上空をまたいだ北海道新幹線が海峡へ向かう在来線と合流する。白い陸橋は新幹線。その下を走るのは在来線の津軽海峡線。つい最近まで、この線路を寝台特急「トワイライトエクスプレス」や「北斗星」が、夜汽車のワクワクを詰め込んで走っていた。

津軽線の気動車には車掌さんが乗っていた。駅ごとに下車する人を迎える。こういうのも、もう珍しい風景になりつつある。

大湊線と津軽線を乗り潰しに来たというお客さん。横浜からやってきて、この列車で終点の三厩まで乗車するという。

新幹線の乗換駅となる津軽二股駅が近づいてきた。

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