1日あたり2,370円で日本全国のJR線の普通・快速列車の自由席が乗り放題になる「青春18きっぷ」。青春と銘打たれてはいるが、利用年齢に制限はない。むしろ鈍行を乗り継いで行く自由きままな鉄道旅は、時間にしばられないサライ世代の特権だ。

さて今回、この「青春18きっぷ」だけを使って行ける日本縦断の大旅行を企てたのは、58歳の鉄道カメラマン川井聡さんである。ルールは5枚つづりの「青春18きっぷ」2枚分(2万3700円)、つまり5日間×2=10日間だけで達成できることと、車窓を楽しめるようになるべく日中の移動を基本にすること。

九州の南のほぼ端・枕崎駅から、北海道の北の端・稚内駅まで、列車を乗り継いで行く日本縦断3233.6kmの9泊10日の旅。2日目は早朝の熊本駅から出発です。

※ 1日目《枕崎駅~熊本駅》の様子はこちらから!

「青春18きっぷ」で行ける日本縦断列車旅《2日目》のルート

《2日目》熊本 7:29 ~ 荒尾 8:16

2日目の朝、熊本市内は雲一つない晴天だった。今日の旅行はここから出発し、九州を出て、広島は宮島口駅まで行く予定だ。観光列車を満喫した昨日と異なり、今日は普通列車の乗り継ぎで九州を北上し、日本三景の一つ宮島を目指す。

熊本駅は高架工事中。昭和30年代に造られたこの3階建て駅舎も、2018年頃には取り壊される予定らしい。

高架工事が完成した4,5,6番線ホームへ。屋根を支える巨大な柱や梁は木で覆われ、どこか城を連想させる豪壮な気配をかもし出している。そして今日の一番列車、鳥栖行きの普通電車が入線してきた。

ロングシートの二両編成。熊本駅を出るときには座席はほぼ埋まったが、2つめの崇城大学前駅で学生が下車して、空席が目立ちはじめる。

しばらくすると西南戦争の激戦地・田原坂を走り抜ける。いまでもこの周辺からは銃弾が出土するという。ここに鉄道が開通したのは明治24年。戦からわずか14年後だから、建設当時は戦争の痕跡もそうとう濃かっただろう。現代的な車内で、美しい山の姿を眺めながら、そんな歴史に思いを馳せる。

車窓に緑が多くなると、やはり旅行をしている気分が高まる。日曜とあって、小旅行風の人たちも多い。ときおり横を駆け抜ける九州新幹線を見ながら一駅ずつ北上する。

運転室にやたら人が集まっている、と思ったら、新人運転士の訓練だったらしい。「お師匠さん」の指導のもと、気持ちの良い緊張感に包まれていた。

電車は鳥栖行きだが、手前の荒尾駅で下車。次に乗る小倉行きの始発駅である。荷物を持って移動する身には、乗降客が多い駅で乗り換えは極力避ける方針だ。

荒尾駅の下車した電車の向かい側ホームに停まった白い快速電車に乗り換える。古レールを使ったクラシックな跨線橋が、真新しい車両の窓に映っている。

線路で組まれた建造物は無骨で美しい。旅先で出会うたびに、「またあうまで元気でな」と心の中で挨拶するのだけど、再訪したときには姿を消していることも少なくない。

《2日目》荒尾 8:33 → 小倉 10:57 

小倉行きの快速電車は、ロングシート車とボックスシート車の併結だった。ボックスシートに荷物を置いて、車内が空いてるうちに車内散歩。

ロングシートにちょっとだけ取り付けられたヘッドレストの席が、そこだけお得な感じ。

小倉行き快速の乗客は全車両で10人ほど。自分の乗った車両には、親子がひと組いるだけ。久留米から小倉まで新幹線ならほぼ30分、こちらは約2時間半。今どきの旅じゃないよなあと、ほのかになさけなくなってしまう。

ここで昨日の「SL人吉」以来ひさしぶりの車内改札となった。ちょっと嬉しくなって、記念に隣の駅までのきっぷを一枚購入。

今回、日本縦断コースを考えた際に、とくに考えたのが乗り継ぎ駅のことだ。大阪や博多などの大きな駅で乗り継ぐと、列車の本数は多いが乗客も多いから、それだけ座席の確保が難しくなる。だから都市区間ではできるだけ始発駅から乗車することにした。熊本駅で乗った鳥栖行きの列車を途中の荒尾駅で降りて、小倉行きに乗り換えたのもそんな理由からだ。

そして列車は小倉駅めざしてひた走る。途中の博多駅では車内の乗客が大半が入れ替わったが、斜め向かいのボックス席にいる親子は降りる気配もなくそのまま。いったいどこまで行くんだろう。

>>次ページへ続く

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