由緒ある庭と一体になる静謐に包まれる宿
ふふ 奈良(奈良市高畑町)
奈良公園の南、浮見堂(うきみどう)が浮かぶ鷺池(さぎいけ)に面する瑜伽山(ゆうがやま)園地は、明治から大正にかけて大阪財界で活躍した山口吉郎兵衛の別荘があったところ。文化的価値が高い庭園や茶室が復元整備され、昨年5月から公開されている。この園地の南側に立つのが『ふふ 奈良』である。
建築デザインは新国立競技場の設計で知られる建築家・隈研吾さん。外観は規則的な凹凸が美しい大和張りを黒く仕上げることで繊細な陰影が生まれ、閑静な趣が満ちる。宿のブランドカラーのひとつが墨色(グレー)ということで、館内全体がしっとり落ち着いた雰囲気だ。
坐することを意識した、堀り込みのリビングをはじめ、客室はすべて異なるデザインになっている。
上質な空間に加え、テラスには天然温泉の露天風呂を備え、そよぐ竹の音を耳に、湯浴みができる。
食事は瑜伽山園地に面する食事処「滴翠(てきすい)」でいただく。夕食は日本料理か鉄板焼きを選ぶ。いずれも地産の食材を使いながら、和漢の香りやコクを加えた独創的な料理。奈良の特産である大和当帰をはじめ陳皮やウコン、柿の葉などが多用される。旅の疲れが取れ、体が元気になる味わいだ。
ふふ 奈良
令和2年6月5日開業。隈研吾さんが手がけ、庭と建物が調和する「庭屋一如」を叶えている。
奈良市高畑町1184-1
電話:0570・0117・22
チェックイン15時、同アウト11時 料金:1泊2食付きひとり3万8650円~ 30室。
交通:近鉄奈良駅からタクシーで約5分
※この記事は『サライ』本誌2021年11月号より転載しました。(取材・文/関屋淳子 撮影/大腰和則)