奈良に魅了された店主が、奈良を愛する人のために手がけるのは、古を尊び新しく驚きのある料理の数々。旅をより思い出深くする、食の楽しみを案内する。

ならまちの奥深くで出会う伝統と革新の新懐石
『白 Tsukumo』(奈良市紀寺町)

正倉院御物「金銅の八曲長杯」を奈良の陶芸家・尾西楽斎が写した器、「正倉院型向付」に盛られたカマスの塩焼き。大根おろし、大和橘の皮のすりおろし、出汁とともにいただく。

「ならまち」は元興寺の旧境内を中心とする地域を指すが、観光客の姿がまばらになる十輪院にかけてが今、おもしろい。住宅街の思いがけない場所に、求めていた奈良を見出すことができる。

例えば『白(つくも) Tsukumo』は、平成27年にJR奈良駅近くの三条に店を構え、丁寧な料理が食通の間で評判になった懐石料理店だ。

その『白』が今年6月6日、満を持してならまちのはずれに移転した。開店から数か月、早くも予約の取りづらい店となっている。

肝や皮も含めて丸ごと1羽使った味わい深い大和肉鶏の卵とじを白ご飯にのせて供す。自家製漬物と特製十七味が添えられる。
飯炊きには土鍋を愛用。滋賀・彦根の湖東焼やきを再興させた陶芸家・中川一志郎さんの作品だ。米は奈良県産のヒノヒカリ。

「古の向こう側にある何かを奈良に感じて、強く惹かれました。作り込んでいない歴史観、長年かけて熟成された鄙(ひな)の中にある奈良の麗しさを僕なりに〈ひなびうるわし〉と呼んでいますが、ここで自分の料理を出せることが誇りです」

海外でも研鑽を積んだ店主の西原理人さん(44歳)は語る。

店名の白には、無垢、百から一を引くことで満に到達せず追求をし続ける、守りに入らないなど、様々な思いが込められている。

これまで歩んできた地の土を練り込んだ壁など、趣向を凝らした店内は、訪れる人に驚きと喜びをもたらす食空間だ。

京都、軽井沢、ニューヨーク、ロンドンなどで腕を磨いた店主の西原理人さん。古都奈良の奥深さに惹かれて6年前に『白(つくも)』を開いた。

西原さんの料理の根底にあるのは茶懐石だが、あえて完成された形ではなく、遊び心を入れる隙間を持たせている。奈良の秋の風物詩となっている奈良国立博物館の正倉院展の時期になれば、展示品を見て学んで、器や盛り付けなどに反映させる。大和野菜や大和牛、鶏など地の物も積極的に取り入れるなど、奈良への敬意をこめた料理を完成させる。

「地元の方にも喜んでいただける料理を心がけています」

西原さんの思いは、すでに奈良の人々に受け止められている。

蕎麦懐石店に務めていたこともある西原さんが打つ蕎麦は、香りと喉越しを追求した「八五一五」(二八と九一の間)。『白』の箸休めの定番だ。11月頃からの新蕎麦が楽しみだ。
自家栽培の山田錦から造られる千代酒造(御所市櫛羅)の純米無濾過生原酒「櫛羅」。酸度が高くきりっとした味わいが、洗練された『白』の料理を引き立てる。1合1100円。

白 Tsukumo

奈良市紀寺町968(2021年6月に新店舗に移転)
電話:0742・22・9707
営業時間:昼12時~(最終入店12時30分)、夜18時~(同19時)
定休日:月曜、毎月最終日、火曜・毎月1日はランチ休業
料金:昼5500円〜、夜1万6500円〜 16席。要予約。
交通:近鉄奈良駅より徒歩約18分 

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※この記事は『サライ』本誌2021年11月号より転載しました。

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