取材・文/鈴木史子(ウィンダム)
京都の街と歴史、紅葉名所など見どころを熟知しているのが、京都のタクシードライバー。知られざる観光情報を聞けば、あなたも“京都通”になれる。
秋の京都を訪れる一番の目的は、美しい紅葉を愛でることだろう。効率よく移動して、ゆっくり紅葉観賞をするためにタクシーを活用する人も多い。そのため地元のタクシードライバーは、長年観光客を案内するうちに、定番だけでなく穴場の情報にも通じるようになった。
例えばヤサカタクシーには、約1200人のドライバーのうち、観光案内ができる観光タクシーの資格を持つドライバーが約650人。彼らは道を熟知するだけでなく、観光地や寺院の案内までできる京都観光の専門家といえる。「京都検定」(京都・観光文化検定試験)を受験したり、その他にも勉強会や研修会に参加するなど、常に勉強と情報収集を欠かさない。
とくにJR東海のCM「そうだ京都、行こう」で紹介される紅葉名所は毎年大賑わいになることから、シーズン前の事前確認は必須。非番の日に道順や駐車場の位置を確かめに行くドライバーもいるという。
そんなヤサカタクシーのドライバーが推薦する紅葉名所をいくつか紹介しよう。
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ドライバー歴18年の高部繁さん(64歳)は西部の善峯寺(よしみねでら)を挙げる。
「秋になるとお寺を囲む山全体が紅葉します。昼間もきれいですが、夕暮れ時、光がさす時間帯の美しさは格別です」
【善峯寺】
京都市西京区大原野小塩町1372
電話:075・331・0020
入山時間:8時〜17時(受付は16時45分まで)
入山料:500円
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嵯峨の宝筐院(ほうきょういん)を挙げたのはドライバー歴24年の高垣幸雄さん(68歳)。
「白河天皇(1053〜1129)の勅願で建立された宝筐院さんは、足利義詮の菩提寺で、南北朝時代には敵味方に分かれた楠木正行と足利義詮の墓が仲良く並んでいます。庭園には多くのモミジやドウダンツツジがあり、晩秋から初冬にみごとな紅葉を見ることができます」
市内の紅葉の知られざる名所を知っているのもタクシードライバーだからこそ。
【宝筐院】
京都市右京区嵯峨釈迦堂門前南中院町9
電話:075・861・0610
拝観時間9時〜16時(11月は16時30分まで)
拝観料500円
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ドライバー歴25年の塩野義弘さん(63歳)は、「左京区の圓光寺さんの十牛之庭は、あまり広くはありませんが、色付いた楓と岩や苔のコントラストがとても美しい庭です。参拝客が少ないので、風景を独占することができます」と薦める。
【圓光寺】
京都市左京区一乗寺小谷町13番地
電話:075・781・8025
拝観時間9時〜17時
拝観料500円
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ドライバー歴5年の田尻哲也さん(45歳)が好きな場所は、京都御所西の京都平安ホテルの庭園だ。
「アメリカの日本庭園専門誌『ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング』でいつもランキング上位
に選ばれている庭には、池や滝の流れる築山もあります。見事な紅葉はホテルのロビーから見ることもでき
ますが、カフェやレストランからの展望が素晴らしい」
【京都平安ホテル】
京都市上京区烏丸通上長者町上ル
電話:075・432・6181
料金:1泊2日1人9500円~(一般利用。地方職員共済組合員は8000円〜)
チェックイン15時、チェックアウト11時
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以上、京都のタクシードライバーが薦める京都の紅葉名所をご紹介した。いずれも公共交通機関やレンタカーで行ける場所だ。しかし、混んだ道を避けたり、寺院の入口に最も近い駐車場へ車を着けるなど、楽に観光するために地元の観光タクシーを使う利点は大きい。
名所を効率よく巡り、京都らしい食事や買い物の案内もしてくれる観光タクシー。予約の際に、行きたい場所やどのような紅葉が見たいかなどの希望を伝えると、ドライバーが事前に準備でき、より密度の濃い京都観光が期待できる。
うまくタクシーを活用して新たな魅力を発見できれば、今までにない旅となるだろう。
【ヤサカタクシー】
公式サイト:http://www.yasaka.jp/
取材・文/鈴木史子(ウィンダム)
※この記事は『サライ』本誌2016年10月号より転載しました。