NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で描かれる北条義時の物語は、いよいよクライマックスを迎えようとしています。最後の山場が「承久の乱」です。「承久の乱」とは、北条義時を討ち幕府を倒したい朝廷と、それに対抗する幕府軍との一連の戦いを指します。ただ、名前を耳にしたことはあっても、詳しくはご存知ないという方もいるのではないでしょうか。

今回は、日本史上初の朝廷と武家の間で起きた武力争い「承久の乱」の古戦場跡を訪ねてみました。戦いの舞台となったのは、現在の岐阜県や滋賀県、京都府などです。およそ800年の時が経っても、そこにある山々や川の流れは変わらずに当時の面影を残してくれています。今と昔を重ね合わせることで、当時の登場人物らも眺めたであろう景色を追体験できる……そんな古戦場跡をご紹介いたします。

「サライ京都チャンネル」では、『鎌倉殿の13人』に登場する人物のゆかりの地や主な合戦地を訪ね、動画レポートをお届けします。このレポートをご高覧いただければ、ドラマをより一層楽しんでいただけることと存じます。

目次
戦いの火蓋が切られた「大井戸の戦い」
最大の激戦・「大豆戸の戦い」
「墨俣の戦い」の背景には…
後鳥羽天皇が眠る、大原の地
各古戦場跡、所在地とアクセス情報

戦いの火蓋が切られた「大井戸の戦い」

「承久の乱」発端の地、城南離宮(現・城南宮)。後鳥羽上皇は、この地に「流鏑馬揃え」と称して、畿内近国の武士や僧兵を集め、自分の影響力をはかっていた。

承久3年(1221)5月、後鳥羽上皇は執権・北条義時追討の院宣を出します。それを受けて、幕府軍は三手に分かれて京都へ進軍。対する朝廷軍は、防衛のために木曽川沿いに軍を配置。初めに両者がぶつかったのが、大井戸渡(おおいどのわたり)でした。東山道を進んだ幕府軍5万余騎が押し寄せ、両軍が木曽川を挟んで激突。「承久の乱」が開戦しました。

「承久の乱」幕府軍の進路

このように、対岸の敵に対して河を渡って攻撃する戦闘は「渡河戦(とかせん)」と呼ばれます。この「大井戸の戦い」では、朝廷軍2万余騎に対して、5万余騎と数に勝る幕府軍が圧倒し、勝利を収めました。開幕から朝廷軍を敗走させたことで、その後の戦いを優位に進めたとされます。

舞台となった大井戸渡は、現在の岐阜県美濃加茂市太田のあたりとされます。河畔には、当時のものを伝えるものはありませんが、堤防から望んだ木曽川は当時の武士らが眺めた景色と重なります。豊かな水の流れが、時代を超えて、対面しにらみ合う両軍の姿が浮かび上がらせてくれるのではないでしょうか。

大井戸の戦いの舞台となった、木曽川。

また、木曽川近くの土田下切(どたしもぎり)という地には、この戦いで命を失った武士たちを弔う「五輪塔群」があります。五輪塔(ごりんとう)とは、五種の部分からなる供養塔・墓標のこと。古い五輪塔や石造仏が各地に残され、古くから「大井戸の戦い」の戦死者を弔ってきたとされます。

大井戸の戦いの戦死者を弔う、土田下切の五輪塔群。

最大の激戦「大豆戸の戦い」

前渡不動山から前渡の地。

「大井戸の戦い」の翌日には、「承久の乱」最大の激戦にして勝敗を決定づけた合戦が行われました。「大豆戸(まめど)の戦い」と呼ばれるその戦いが繰り広げられたのは、現在の岐阜県各務原(かかみがはら)市・前渡(まえど)です。鎌倉時代には「大豆戸」「摩免戸」と書いて「まめど」と呼ばれていたとされます。

この地では、幕府軍・北条泰時(やすとき)と朝廷軍・藤原秀康(ひでやす)の両総大将が、木曽川をはさみ、対峙しました。加えて、幕府軍には兄・三浦義村が、朝廷軍には弟・三浦胤義(たねよし)が参戦したため、離反した兄弟が敵同士として向かい合ったのでした。

5日夜に「大井戸の戦い」で東山道軍が進軍を開始したことを受け、東海道の幕府軍もまた、浅瀬のある大豆戸の地で木曽川を渡り、渡河攻撃を仕掛けました。これを受けた1万余騎の朝廷軍では、三浦胤義や鏡久綱(ひさつな)らが奮闘。しかし、10万余騎の兵力差を誇る幕府側が、またも数で圧倒しました。朝廷軍は総大将・藤原秀康を筆頭に持ち場を放棄して、京都へと逃げ帰ったとされます。

前渡不動山で承久の乱について伝える、立て札。

古戦場を訪ねると、前渡にそびえる前渡不動山(まえどふどうさん)に「承久の乱合戦供養塔」があります。「承久の乱」の名を冠した、戦没者を供養する五輪塔が安置された史跡です。合戦から800年あまりが経った現在も、毎年6月に地元の住民による法要が行われています。


承久の乱合戦供養塔。
供養塔は、現在も静かに安置されている。

「墨俣の戦い」の背景には…

秀吉の一夜城で有名な墨俣は、承久の乱や源平合戦と幾度も戦の舞台となっている。

「大豆戸の戦い」が行われた同日、そこから少し離れた墨俣(すのまた)でもまた、合戦が起こりました。現在の岐阜県大垣市に位置する墨俣の地では、総大将・藤原秀康や武士・山田重忠(しげただ)ら朝廷軍が立て籠ります。そこを義時の弟・北条時房(ときふさ)が攻め、陥落させたのでした。なすところなく敗れた朝廷軍は持ち場を放棄し、京都へ敗走。こうして「墨俣の戦い」もまた、幕府軍の勝利で終わります。

ちなみに、墨俣(もしくは洲股・洲俣)の地は、木曽川・長良川・揖斐(いび)川などの合流点にあたります。そのため古くから交通・軍事の要衝として、度々東西両勢力が接触する戦場となりました。「源平合戦」の一つで頼朝の弟・義円(ぎえん)が命を落とした「墨俣川の戦い」や、南北朝の内乱などが挙げられます。

現在、住宅街にひっそりとたたずむ義円公園内には、古戦場碑と義円地蔵、供養塔があります。幾度も戦の舞台となったこの地には、戦いで命を落とした多くの武士たちが眠っているのです。



古戦場碑と義円地蔵、供養塔がある、義円公園。

後鳥羽天皇が眠る、大原の地

「墨俣の戦い」の後の合戦でも、朝廷軍は各地で敗走が続きました。そして6月15日、敗北を悟った後鳥羽上皇が、北条泰時のもとへと使者を遣わし、事実上の降伏文書を渡させます。こうして「承久の乱」は、幕府軍の圧勝に終わったのです。その後、幕府の軍勢が京都・六波羅に到着し、朝廷側の首謀者らを捕まえていきました。

後鳥羽上皇に下された処罰は、隠岐島への配流。現在の島根半島の沖合にある隠岐島で、彼は最後の19年間を過ごしました。その地へ向かう際に立ち寄った場所には、歌碑などが残されています。

帰京を許されないまま60歳で死去した後鳥羽上皇。その墓は、隠岐郡と京都・大原の二か所にあります。京都の墓は、現在の京都市左京区大原勝林院(しょうりんいん)町に位置する「後鳥羽天皇 大原陵(おおはらのみささぎ)」です。天台宗の寺・三千院門跡の先で、今も静かに佇んでいます。

後鳥羽天皇 大原陵

***

京に攻め入る幕府軍とそれを防ぐ朝廷軍とが、各地で戦いが繰り広げた「承久の乱」。この戦いに幕府軍が勝利したことで、武士が天皇即位の人事をも掌握し、真の武士時代が始まったのでした。

ドラマで興味を持った方は、実際の古戦場跡にも足を運んでみてはいかがでしょうか。その地に息づく自然や史跡が、命がけで戦った武士らの生き様を伝えてくれるはずです。

各古戦場跡、所在地とアクセス情報

「大井戸の戦い」の古戦場跡
住所:岐阜県美濃加茂市太田本町5丁目3 虚空蔵堂・木曽川スポット公園付近
アクセス:【車】・東海環状自動車道 美濃加茂ICから車で約9分
        ・名神高速道路 小牧ICから国道41号を利用し車で約36分
     【公共交通機関】・JR美濃太田駅(南口)よりあい愛バスあまちの森
             ・しょうよう線「太田小学校」下車 乗車時間約4分
https://www.kankou-gifu.jp/spot/detail_7086.html

「大豆戸の戦い」の古戦場跡-「承久の乱合戦供養塔」
住所:岐阜県各務原市前渡東町6 佛眼院・前渡不動尊
アクセス:【車】東海北陸道 岐阜各務原ICから国道21号利用約18分
     【公共交通機関】・JR各務ヶ原駅から麓まで徒歩約50分
             ・名鉄二十軒駅から麓まで徒歩約30分
              ・バス:ふれあいバス東部・南部線、循環休日線「前渡不動前」
     【共通:麓の駐車場から】徒歩約6分。前渡不動山登山道、中腹
https://www.kankou-gifu.jp/spot/detail_7052.html

「墨俣の戦い」の古戦場跡-「源平墨俣川古戦場 義円公園」
住所:岐阜県大垣市墨俣町下宿39-1 義円公園内
アクセス:【公共交通機関】JR穂積駅 南口バス停から名阪近鉄バス利用18分下宿バス停下車、徒歩約7分
     【車】・名神高速道路 大垣ICから約17分
        ・名神高速道路 岐阜羽島ICから約14分
        ・名神高速道路 安八スマートICから約13分
        ・JR穂積駅から約12分
https://www.kankou-gifu.jp/spot/detail_7108.html

「後鳥羽天皇 大原陵」
住所:京都府京都市左京区大原勝林院町
アクセス:【車】名神高速道路 真野ICから「大原」方面へ
     【公共交通機関】京都バス19系統「大原」下車、徒歩約10分
     三千院の付近
https://www.kunaicho.go.jp/ryobo/guide/082/index.html

協力/宮内庁
企画・編集・動画/末原美裕・貝阿彌俊彦(京都メディアライン https://kyotomedialine.com FB
文/トヨダリコ(京都メディアライン)

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