沖縄伝統の本格「沖縄そば」の作り方
さてこの後は、伝統的な沖縄そばの作り方を、松本料理学院の院長、松本嘉代子さんに紹介してもらいます。この一連の工程を知ることで、沖縄伝統の食文化にも触れることができるでしょう。
【材料(5〜6人分)】
手打ち麺
強力粉 500g
重曹 小さじ1
塩 小さじ2
卵 1個
水 1カップ
打ち粉(片栗粉) 適量
サラダ油 適量
そばだし
豚骨(背と腰の骨、尻尾) 1.5〜2kg
水 適量
鰹だし 1カップ
塩 小さじ21/2程度
醤油 少々
まず、麺を打ちます。
「かん水や灰汁はなかなか手に入らないので、同じようなアルカリ作用を持つ重曹で代用します。卵を使うのは美味しさのためで、麺の色もより黄色くなります。
小麦粉は強力粉を使います。メーカーによって出来上がった麺の感じが違ってきますが、沖縄そばには沖縄製粉の『王門』が一番向いているようですね」
松本先生はいろいろな粉で試した結果、なぜか沖縄のものがしっくりいくといわれます。不思議ですね。
生地をまとめて寝かす時間は、最低でも1時間は必要です。寝かす時間が足りないと綿棒でのばしにくく、茹でたときに切れやすくなります。また、冷蔵庫に入れておいて、翌日のばしても構いません。
麺を茹でて、サラダ油をまぶして冷ましたものは冷凍保存できます。多めに作って、冷凍しておくとよいでしょう。
【麺の打ち方】
次に、本格的に豚骨でだしを取る方法です。この豚だしこそ、イリチー(炒め煮)やンブシー(味噌煮)といった琉球料理の味の要になります。
松本先生によると、
「そばだしの場合は、昔から豚の尻尾を入れるとだしがよく出るといわれています。ラーメンの白濁した豚骨スープを取るには強火ですが、そだしは弱い火加減で煮立たせずにゆっくり煮ていきます。
豚だしと鰹だしとの割合は、豚だし6〜7カップに対して、鰹だし1カップが目安。このだしは旨味がしっかりしていますので、塩は少量で済みます。醤油も香りづけ程度で、ほんの少しです」
とのこと。
豚だしと鰹だしの比率については好みもあるでしょうけれど、アッサリした味がよければ、鰹だしを多めにすればよいのです。
いずれにしても、旨味たっぷりで、それでいて使用する塩が少ないので、食べた後も喉が乾くようなことがありません。しっかりしていながら、やさしい味なのです。
【スープの作り方】
「だしだけを味見すると、やや濃く思われますが、麺にかけるとちょうどよい濃さになります。麺はまぶした油を取るために、さっと湯に通してから丼に入れ、そこに一度だしを注ぎます。そのだしを切って、再びだしをかけます。
こうすることで、麺がだしと馴染んでより美味しくいただけます」
松本先生は、このひと手間で、美味しさに違いが出るといいます。
実際に食べてみると、麺にもだしの味が染みて一体感があります。
上にのせる具は、豚三枚肉の煮付けと棒かまぼこを数切れ。青ねぎと紅生姜が薬味の定番です。店によっては、針生姜を入れるところもあります。
唐辛子を泡盛に漬け込んだ「コーレーグス」をかけると、さらに風味がよくなります。
油でコーティングした麺と、豚だしのきいたそばだし(店によっては、鰹だし多めのところもあります)。そして、上にのった三枚肉の煮付け。これが沖縄そばの基本形です。
しかし今や、麺やだし、具にもさまざまなバリエーションがあります。沖縄そばの好みは、それこそ十人十色。自分の好きな味を見つけるのも、また楽しいものです。
文/鳥居美砂
ライター・消費生活アドバイザー。『サライ』記者として25年以上、取材にあたる。12年余りにわたって東京〜沖縄を往来する暮らしを続け、2015年末本拠地を沖縄・那覇に移す。沖縄に関する著書に『沖縄時間 美ら島暮らしは、でーじ上等』(PHP研究所)がある。