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京都『木乃婦』の3代目・髙橋拓児さんが第2回「和食の魅力 料理サロン」用に考案した、秋らしさに彩られた献立から、焼き物の「魳(かます)柚庵焼」と「酢取茗荷(すどりみょうが)」。

自然の美しさや季節の移ろいを巧みに取り入れながら、旬の素材の味わいをいかしてつくられる日本料理。その奥深い魅力を伝える活動に力を入れているキッコーマンは、「和食の魅力  料理サロン」と題した日本料理の講座を4回にわたって開催しています。

この講座は、国内外で活躍する料理人が、それぞれのテーマで和食の魅力について語り、テーマに沿った料理を実演するというもの。参加者は丁寧な解説付きで調理の手順やコツを学べるだけでなく、料理人が実演する献立の数々をコース仕立てで実食し、その味わいも体験できるのが本イベントの大きな魅力です。

そんな「和食の魅力 料理サロン」の第2回が、10月8日(土)に、キッコーマン東京本社のKCCホールで開催されました。今回、講師を務める料理人は、京都の料理店『木乃婦(きのぶ)』3代目の髙橋拓児さんです。大盛況だったイベントの模様をご紹介しましょう(第1回 料理サロンのレポート記事を読む)。

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第2回「料理サロン」の講師、京都の料理店『木乃婦』3代目の髙橋拓児さん。

■和食に欠かせない「香り」の魅力を考える

今回、髙橋さんが選んだテーマは「和食と香り」です。髙橋さんのこんな談話から講座が始まりました。

「香りには季節がとても深く関係しているんです。春は木の芽、夏は青柚子、秋は葉や土の燻ったような香り、冬は黄柚子や生姜の香り……。私たち日本人には、“季節を連想させる香り”というものが頭の中にあるのです」

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「香りと季節」について説明する髙橋拓児さん(中央)。向かって左は司会進行 役を務めるフードビジネスコンサルタントの柿澤一氏(かきざわ・ひとし)さん。

日本料理は、様々な香りと味を使い分けながら表現される料理。たとえば、和食のおいしさを考えるとき、「出汁」の香りを連想する方は多いのではないでしょうか。このように、料理において香りが重要な役割を果たしていることに改めて気づかされます。

髙橋さんは今回、単純に料理の作り方を紹介するのだけではなく、「なるほど、こういう考え方で料理をつくるんだ」ということを知って欲しいと言います。

■「香り」は季節感を表現し、美味しさを膨らませる

この日のために髙橋さんが用意した献立は、いずれも秋の食材を使ったものばかり。参加者には詳細な献立表が配られ、それぞれの料理について下ごしらえのコツなどをも丁寧に解説してくれました。目の前でプロの技を見ることができる貴重な機会です。

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参加者に配られたお品書きは、講師の髙橋さんが本講座のためにつくったもの。前菜からデザートまで、計7品をコース仕立てで味わうことができます。

最初の料理は「栗白和え」。栗の渋皮煮をつくり、それを白和えにしていくという手間のかかった一品です。思いもよらぬ組み合わせに驚かされますが、渋皮の渋い味わいや香りが、栗の美味しさを膨らませてくれるのだと髙橋さんは言います。

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じつに優しい味わいの「栗白和え」。

髙橋さんは、「栗を煮るときは沸騰させてはいけません。沸騰せずに火を通すには、93℃を保つのがベスト。95℃を超えてしまうと、渋皮が破裂しやすくなるのです」とアドバイス。調理科学を交えたわかりやすい説明に、参加者も納得の表情です。

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栗の渋皮に残ったスジは、えぐみのもとになるので、竹串で丁寧に取り除きます。

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下処理した栗になめらかな豆腐の衣を絡めていきます。

2品目は、すり下ろした蓮根を丸めて揚げ、椀に仕立てた「れんもち 松茸 柚子」。ここで、髙橋さんが知ってもらいたいと考えたのは、出汁に使った昆布の香りについてでした。

「昆布の美味しさは香りにあります。上質な昆布の香りを分析すると、抹茶やほうじ茶、洋梨、栗、カラメル、シナモン、茸、麝香(じゃこう)、伽羅(きゃら)……こんなに多彩な香りを含んでいます。さらに、軽い香りから重い香りまでを含んでいて、縦横無尽に幅が広いので、昆布は野菜から魚、肉まで、さまざまな食材と合うのです。一方、鰹節の香りには昆布ほどの多彩さはなく、狭い範囲に集中しています」

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「多彩な香りを持つ昆布でとった出汁は、さまざまな食材と相性がいいのです」と、髙橋さん。

さらに、すり下ろした蓮根を油で揚げることで、こうばしさが引き立ちます。この香りも、秋らしさを感じさせるもの。さらに、昆布と相性のいい松茸の香りも加わりました。

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すった蓮根を丸めて油で揚げた「れんもち」。

出汁は昆布だけだと頼りなさそうに感じますが、髙橋さんは「和食は“引き算”をしたほうが味がよくなる」といいます。香りや風味をいかすことを考え、「味を濃くする」のではなく、「味をつなぐ」という意識で調味料を加えていくのだそうです。

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「れんもち」と取り合わせた「松茸」は、香りを楽しむ食材。

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「れんもち」に熱々の出汁を注ぐと、こうばしい香りが一気に立ち のぼりました。

3つ目の料理は、「魳(かます)柚庵焼」です。漬け地に加えた黄柚子の皮からは、秋冬の香りがします。ここに魳を漬け込み、金串を打って焼きます。これを軽く炙った杉板で挟み、再び炙って杉の香りを魚に移していきます。この木の香りは、落ち葉を集めて焼いたような、秋を感じさせる香り。髙橋さんの手から生み出される料理は、いくつもの香りを組み合わせることで、味わいを膨らませていることがわかりました。

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柚子をすりおろして、柚庵焼きの漬け地に加えます。

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焼いた魳を炙った杉板で挟み、さらに炙って香りを移します。

■学んだ料理をコース仕立てで試食

講師が実演してくれた料理を実際に試食できるのが、この講座の大きな魅力です。昼食を兼ねて、髙橋さんが本講座用に考案した料理は、コース仕立てで提供されます。秋らしい風情を感じる献立のすべてをお見せしましょう。

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コースの始まりに供された八寸。手前から時計回りに、調理を実演した「栗白和え」、「子持 鮎」、「松茸浸し」。

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御椀は「れんもち 松茸 柚子」。蓮根を揚げたこうばしい香り、松茸の香り、柚子の香り、椀にはった昆布出汁の香りの四重奏。

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焼物は「魳柚庵焼 酢取茗荷」。炙った杉板の香りに加えて、土色の器にあしらった紅葉の彩りが、より季節の味わいを引き立てます。

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茸の香りがふわっと漂う「占地(しめじ)加薬ご飯」。実演はありませんでしたが、レシピが配布され、 詳しい作り方の解説もありました。

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デザートの「ココナッツアイス トンカ豆」。ココナッツアイスには、杏仁のような香りのするトンカ豆が使われ、香りを引き立てる杏の甘煮が添えられました。

参加者のみなさんは、調理の様子を実際に目にした後だけに、いかに手間をかけてつくられているか実感でき、そのおもてなしの心にまで思いを馳せながら味わうことができました。 

本講座には『サライ』読者4名も参加。その感想を、みなさんにお聞きしました。

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講座に参加してくれた『サライ』読者のみなさん。「松茸に菊の取り合わせは、初めての経験です」「れんもちの食感がとても美味しい」と、それぞれに感想を語り合いながら、秋の味覚を楽しみました。

「意外な発見の連続だった」と話してくれたのは永井正哉さん。「私は普段はほとんど料理をしないのですが、栗の渋皮煮を白和えに仕立てる発想に驚かされました。どの料理も秋を感じさせてくれて、とても美味しかったです」

髙橋さんの講義では、具体的な香りの分析や食材に火が入る温度など、調理科学に基づいた解説が印象的でした。「わかりやすい説明で、説得力がありました。こうした知識が身につくことで、料理の腕が上がるのだなぁと感じました」と、本間美穂さん。

主婦として長年、台所に立ち続けてきた吉岡美香子さんは、「昆布にこんなにいろいろな香りがあったなんて」と、驚きを隠せなかった様子。「髙橋さんに教わった方法で、今度は昆布出汁だけで料理をつくってみたい」と、意欲を見せてくれました。

吉岡さんの友人で大の料理好きだという岩田正子さんも、今回の講座に大いに刺激を受けたそうです。「手間をかけた料理の美味しさを改めて実感しました。最近はインターネットの手軽なレシピばかりに目がいくようになっていましたが、丁寧につくることをもっと大切にしていきたいですね」

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髙橋拓児さん(『木乃婦(きのぶ)』3代目) 1968年、京都生まれ。大学卒業後は『東京吉兆』で修業、京都へ戻り『木乃婦』へ。祖父と父の元で研鑽を積み、同店3代目となる。シニアソムリエの資格を持ち、ワインに合う和の献立を考案するなど、既存の枠組みにとらわれない新しい京料理を提供する。

質疑応答では、参加者から積極的な質問が飛びだし、講座を終えた髙橋さんも手ごたえを感じたと言います。

「今回、テーマに掲げた“香り”についてはもちろんですが、和食における“塩梅”の価値についてもしっかり理解していただけてよかったですね。濃い味つけが好まれる風潮にありますが、“引き算”をすることで生まれる、しみじみとした美味しさを知っていただきたいと思います」(髙橋拓児さん)

また、家庭でつくられる和食にも目を向けている髙橋さんは、料理の連結性をどうやって持たせていったらいいかを、伝えていきたいと話してくれました。「栗の渋皮煮を白和えに仕立てたように、ひとつの料理を他の料理にも展開させることで、献立の幅が広がると思います」

■第3回「和食の魅力 料理サロン」のご案内

キッコーマン「和食の魅力  料理サロン」の第3回は、12月10日(土)に開催されます。次回の講師は、近茶流嗣家(きんさりゅうしか)・柳原料理教室副主宰の柳原尚之さんです。参加申し込み方法などの詳細はキッコーマンのウェブサイトに掲載されています。ぜひアクセスしてみてください。

取材・文/大沼聡子
撮影/太田真三(小学館)
取材協力/キッコーマン

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