真珠の耳飾りの少女を思わせる美貌

彼女とは、現在の浅岡さんの恋人だ。一回り年下の49歳で、2年前に離婚し、大学生の娘と共に都内の実家に住んでいる。インテリア関係の会社で契約社員をしているという。セミロングの黒髪、色白のもち肌で、年齢より若く見えるそうだ。

「なんというか、一目ぼれでね。目が大きくて、大きな白いイヤリングを付けていたんだけれど、それがフェルメールの『真珠の耳飾りの少女』にそっくりだった。これまで、女性に心を動かされることなんてなかったんだけれど、彼女を見たときはビビッときた。きっとこれが初恋なんだと思う」

しかし、思いを伝えることはしなかった。“気持ち悪いオジサン”、“ストーカー”などと言われることが怖かった。

「みんなで行ったのは、大衆的な居酒屋さんだったんだけれど、さりげなく隣に座って、彼女の話を聞いているだけで、楽しい気分になった。彼女は文学少女だったとかで、あらゆる本を読んでいる。志賀直哉、室生犀星、幸田文、白洲正子……またその知識が深い。なんとかして2人で食事に行きたいと思った。それから3か月後、そこそこ打ち解けてきたときに、寿司に誘った」

そこは、浅岡さんが会社員だったころに、会社の仲間と行っていた1人2万円はする赤坂の名店。

「彼女は『こんなにおいしいのは初めて』と喜んでくれて、すごく誇らしかった。私も酒は強い方だけれど、彼女はもっと強く、日本酒をガンガン飲んでも乱れない。2時間くらい小説や作家の話をして、気が付けば私の終電の時間。離れがたかったのと、酔っていたので近くのホテルに泊まってしまった。初めての朝帰りだよ。女房はぐうぐう寝ていたけどね(笑)」

関係は、どちらかと言うと彼女のほうがリードして進んでいった。

「彼女は情熱的で、お互いに10年ぶりだったんじゃないかな。女の人って不思議だよね。服を着ていると、それほど肉がついていないように見えるのに、服を脱いだら、あまりにも肉感的で驚いたよ」

仲が良くなるにつれて、逢瀬の回数は増えていった。しかし、妻が疑うことは一切なかった。

「35年以上も一緒にいる夫婦ってそんなもんだよ。“亭主元気で留守がいい”ってね。私が家にいないと、はつらつとしているみたいなんだ。ウチの女房は、ガサツでタヌキみたいな女だから、彼氏はいないだろうな」

彼女とは、鎌倉や青梅、甲府のワイナリーに日帰りの小旅行をした。

「それなりに楽しいけれど、まあ女房と離婚して一緒になることはないよね。向こうもそれを望んでいないし」

今は、月に1~2回、彼女が休みの日に逢瀬を楽しむ関係を続けている。読書会も、浅岡さんと彼女が男女の関係になってから、気恥ずかしくて行かなくなってしまったという。

「彼女は大胆だけど繊細で、とても知的。ちょっとした受け答えに教養がにじんでいて感心してしまうよ。ただ、食事代は私が出すのはいいんだけれど、最近は『ありがとう』とニッコリ笑うだけ。まあ、いいんだけれど、ちょっとは申し訳なさそうにしてもいいんじゃないかな、って。というのも、先日、私の70歳のいとこが、“後妻業の女”っていうの? 55歳の女に、200万円くらい貢がされちゃってさ、真面目なだけが取り柄の男だから、コロッと騙されちゃった。あの二の舞になるのだけはごめんだと思っているけど、やっぱり別れられないよね。別れるのは、女房にバレたときだね」

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