■「んがー」の変顔は「情報読み取り中」のサイン
爪研ぎは葛藤行動や転嫁行動としても行なう場合があります。
葛藤行動とは、思うことがスムーズに成し遂げられず、葛藤や欲求不満が生じた時に無意識に起こしてしまう行動のことです。
これは猫だけでなく他の動物にも見られる行動ですし、人間だって似たような仕草をすることがあります。たとえば、何か失敗をしてしまって、恥ずかしいと思った時など、頭をボリボリ掻いてみたりしますよね。あれが、葛藤行動あるいは転嫁行動です。
猫も、何かしようとして思うようにいかなかった時、全然違う行動をして気持ちをまぎらわせます。オモチャで遊んでいて急に体をぺろぺろ舐めたりするのも葛藤行動のひとつです。おそらく、うまくオモチャをキャッチできなかったなど、猫なりに理由があるのでしょう。爪研ぎもまた、そうした行動として行なう場合があります。だから、爪のお手入れを兼ねた爪研ぎ=マーキングとは限らないのです。
フェロモンといえば、猫や犬など他の動物の顔の奥には、鋤鼻器(じょびき)という不思議な器官があります。人間にはないもので、フェロモンを嗅ぎ取る器官です。よく、猫が何かのニオイをかいだ時に、口を少し開けて「んがー」というような”変顔”をしていることがありますよね。
これはgape(ゲイプ)と呼ばれる行動です。牛・ヤギ・ヒツジ・馬などの「フレーメン反応」という行動と同じ意味をもっているのですが、この変顔は、鋤鼻器にフェロモンを入れているまさにその時の仕草です。鋤鼻器に入ったフェロモンの情報は、そのまま直で脳に伝達されます。鋤鼻器に届いた情報は、即座に猫の感情に働きかけます。そこで、「あ、素敵な女の子だ!」などといったうれしい感情から性欲につながったりする、いわゆる本能的な行動が発現されます。
鋤鼻器を持たない人間も、ニオイの奥にある何かから本能的に情報を読み取っていると考えられています。