一人じゃないから、この国難を乗り切れる
一度のケンカで疎遠になってしまい、友人に会うために大阪に帰ることはあったものの、実家に寄ることはできなかったとのこと。
「両親のことは近くに住んでいた姉に聞いていたので、まったく知らないということはありませんでした。姉とは大人になるにつれて関係は自然に修復されていました。歳を取ると、異性の兄妹より同性のほうが連絡を取り合うんですよね。兄は結婚してからまったくと言っていいほど、疎遠になっていましたから。
東京ー大阪間って帰ろうと思えばいつでも帰れる距離なので、少しずつ会うのを先送りにしていたら、もう何年も会わなくなってしまっていました……」
そして、この国難の状況に。そんな中、しばらく会ってない母親から手作りマスクが届いたと言います。
「びっくりしました。私の母親は昔から裁縫が得意で、小さな頃はよく手作りの小物を作ってくれたなって思い出しましたね。マスクを見た後に、思い切って電話をしてみたんです。再び小言を言われたり、会話が盛り上がらなかったとしても、一言お礼を伝えたかったから。まぁ案の定、会話はまったく盛り上がらなかったんですけど、何事もなく話せたことにホッとしました」
最後に、母親との関係は今はどうなのか、聞いてみました。
「今は2日に一度のペースで電話をしています。お互いずっと家にいるから、暇なんですよね(苦笑)。いつも『そっちは大丈夫か?』という近況報告しかしていないんですけど、一人ぼっちの不安さは消してくれています。
今東京、大阪は同じような状況で、共通のことがいっぱいあって、会話は途切れません。今は会いに行けない状況なんですけど、この助走のような電話で徐々に距離を掴んでいければいいかなって思っています」
取材・文/ふじのあやこ
情報誌・スポーツ誌の出版社2社を経て、フリーのライター・編集者・ウェブデザイナーとなる。趣味はスポーツ観戦で、野球、アイスホッケー観戦などで全国を行脚している。