取材・文/坂口鈴香
静岡に住む母親のトキ子さん(仮名・91)が認知症になり、上野明美さん(仮名・59)の東京・静岡間の遠距離介護がはじまった。トキ子さんの異変を感じてから何年も経って、ようやく介護認定を受け、介護サービスを受けることができるようになったものの、トキ子さんは「年寄りばかりいるところには、絶対に行かない」とデイサービスを拒否。そのころのトキ子さんはまだ元気だったと上野さんは振り返る。
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■言いようのない不安で涙が止まらない
「ある日突然介護が必要になる」とよく言われるが、上野さん家族にもそんなときがやってきた。
トキ子さんが自宅で転倒、大腿骨を骨折して入院した。そのうえ、トキ子さんを抱え起こそうとした父親の竜二さん(仮名・93)まで腰を痛め、入院。両親ともに要介護となったのだ。
病院から新しいケアマネジャーを紹介され、ケアマネジャーが交代した。上野さんはケアマネージャーと相談して介護ベッドを導入するとともに、住宅を改修して手すりやスロープをつけ、両親が退院後自宅で生活する環境を整えた。
上野さんは、何か起こるたびに東京から静岡に駆けつけた。その心身の負担は、両親の状況が悪化するにつれてますます増大していった。
50代に入るころからはじまった更年期と、トキ子さんの認知症介護が重なった期間は、特につらかったと振り返る。
「言いようのない不安で涙が止まらなくなり、体中から汗が噴き出てくる。もうこの先、真っ暗という絶望的な気持ちでした」
■3回のケアマネジャー選び
上野さんの支えとなったのは、3代目となったケアマネジャーだった。
「母が胆管結石で入院したのですが、そのとき2人目のケアマネジャーの契約がいったん切れたので、新しくケアマネジャーを探しました。ケアマネージャー選びも3回目なので、私の目も肥えてきています。パンフレットを見たり、知人に相談したりして、数人の候補から私が直接面談して決めました。それで今の3代目のケアマネジャーを選んだのですが、その人の対応を見て、それまでのケアマネジャーがいかに良くなかったのかわかりました」
比較したことではじめて、ケアマネージャーの良し悪しが見えてきたのだ。
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