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古民家で営む日々の暮らしからふだん遣いのうつわが生まれる

土井善男さん・清水なお子さん
(京都府)

土井善男さんの作品。右上から時計回りに乳白釉六角輪花鉢(直径12×高さ6cm)、白磁木瓜板皿(縦21×横6×高さ2cm)、白磁8寸平鉢(直径24×高さ7cm)、緑白釉碗(直径12×高さ6cm)、乳白釉3.5寸輪花小皿(直径10×高さ1.5cm)。

土井善男さんは昭和45年、京都府生まれ。妻の清水なお子さんは昭和49年、大阪府生まれ。すぐ近くに、家庭菜園の畑がある。「最も身近なところに理解者と、批評眼を持つ相手がいると思っています」(土井さん)

古来、白磁の凜とした清らかなうつわに人々は魅了されてきた。ひと口に白磁といっても、透き通るような緊張感のある白から温かみのある乳白色まで、その「白」はさまざまだ。青や緑、黄色をわずかに帯びるものもあり、微細に異なる色みや質感が楽しい。

「最近は、張り詰めたような端正な白よりも、温かみのある乳白色のうつわを多く作るようになりました。食卓で陶器と一緒に使っても、喧嘩しないような風情を心がけています。また、釉薬に樫灰や藁灰といった天然の灰を入れることで、青や緑などの色味をニュアンスとして加えます」

白磁の作品が評判をとる土井善男さん(46歳)はそう語る。磁土は地元・京都ではなく、金沢のものを使う。それは、土の色がやや灰色で、かつそこに細かい石を混ぜると硬い印象にならず、温かみが出るという。その同じ土で、染付を作るのが妻の清水なお子さん(42歳)だ。古典の文様を手本にしながらも、やわらかな風情の素地に合う、朗らかで愛らしい染付が魅力。夫妻は、京都精華大学造形学科でともに陶芸を専攻し、やがて一緒に工房を構えた。

「お互い、うつわは料理を盛って初めて完成すると考えています。良質なものを生もうと、突飛なことをしても意味がない。日々の生活をきちんと営むことでしか、よいうつわを作る術はありません」(土井さん)

清水なお子さんの作品。上から、岩に草花紋6寸皿(直径18.5×高さ3.5cm)、十草に蔓草紋小鉢(直径13×高さ5.5cm)、花鳥紋四方皿(直径16×高さ2.5cm)。

ふたりは築100年の古民家に住み、日々の暮らしの中で、歴史の美点や重みを感知しながら、それをどう反映するのか模索している。例えば、かつて日本の食卓では必ずうつわを手に持ったが洋食が増えた現在、食器はテーブルに置かれたままのことも多い。持つことを考えなければ、伝統的な技を継承しながらも、姿はよりシャープにできるのではないか。

自ら菜園で育てた野菜を調理し、自身が制作したうつわに盛り、家族で団欒を囲む。そうやって実際に使いながら、思慮を重ねる。

土井善男さんは染付も手がけていたが「今は形の美しさや微妙な色合いを求める白磁に惹かれて
います」。金沢の磁土は轆轤で成形後、乾燥させる前に削ると、ざっくりした風情が出るという。

夫妻の作品を取り扱う『うつわPARTY』(東京都)店主・坂根さよみさんが語る。

「ふたりとも伝統的な技法の美しさや品格を大切にしながらも、個性や考えを反映した作品を生み出しています。使い込むほど暮らしに馴染むうつわは、気づくと日々の食卓に欠かせなくなります」

ふたりのうつわを毎日の食卓で、一緒に使う。「他の作家と並べても違和感のない作品を目指したい」と口を揃える。日頃は和食が多いが「うつわを購入したイタリア料理のシェフは、もっと自由に、斬新に使ってくれます」。

取材・文/鳥海美奈子 撮影/多賀谷敏雄
※この記事はサライ2017年5月号より転載しました。データや写真、肩書き等は当時のものです。

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