いつの間にか増え続け、使わなくなったうつわはどうするべきか。うつわの見直しを長年、実践してきた阿部絢子さんに訊いた。

料理本の編集やフードスタイリストの仕事をしていた阿部絢子さんにとって、食とうつわは切り離せないものだった。その結果、「料理の数だけうつわがあり、一時期は部屋中に溢れていた」という。

そんな阿部さんが“開眼”したのは、47歳でドイツの家庭にホームステイしたときのことだ。

「朝食と昼食は、パンとジャムとコーヒー。夕食だともうひと皿付く程度のシンプルな食生活でした。また、同じ皿をいろいろな料理に使い、食器棚に並ぶうつわが驚くほど少ない。目から鱗が落ちる思いでした」(阿部さん)

そして、50歳を過ぎて今も住むマンションへ引っ越すにあたり、思い切って溜まりに溜まったうつわの整理をすることにした。

「いきなり捨てるのは決心がいるので、まず、不要と思ううつわを分けることから始めました。分けたうつわは知り合いに引き取ってもらったり、行き先を見つけました。それでも残ったうつわは、処分するしかありませんでした」

そんな阿部さんの実体験から考案されたのが、下の2段階式チェックシートだ。まず、第1段階でうつわの状態を見直し、第2段階で使わなくなった理由を考える。そうすることで気持ちが整理され、処分する決心がつくという。阿部さんの食器棚に並ぶうつわは、そうやって厳選されたものだ。

*  *  *

【2段階式「うつわの見直し」チェックシート】

阿部絢子さんが、自らの体験から考案した「うつわの見直し」チェックシート。食器棚や押し入れにしまい込んだうつわを整理する際の参考にしていただきたい。

●チェックシートの使い方
2段階に分けてチェックします。まず、お持ちのうつわが第1段階の10項目の質問にあてはまるかどうかチェックしてください。チェック項目が3つ以上あれば、今の生活に合わないうつわと考えます。次に、そのうつわについてさらに第2段階の5項目をチェックしてください。ふたつ以上の項目にチェックが付いたら、そのうつわを処分するなどの見直しをしてください。

《第1段階 10項目》
□ 5年間まったく使っていない
□ 欠けたり、ヒビが入ったりしている
□ 修理に費用をかけたくない
□ 修理する場所がわからない
□ 持っていることを忘れていた
□ 汚れや傷が取れない
□ 大き過ぎるか枚数が多くて使えない
□ 自分の作る料理に合わない
□ 重くて洗いにくく、使い勝手が悪い
□ 出し入れに苦労する

《第2段階 5項目》
□ 使用頻度は数か月に一度以下
□ 思い出や愛着、未練がない
□ 料理の嗜し好こうが変わって使わなくなった
□ 来客用だが今は使っていない
□ 引き取り手がない

「愛着のあるうつわには、物語があります。それがなければ、ただのモノです。役割を終えたうつわは整理し、始末のいい暮らしをしたい。うつわを片付けることは今の自分と向き合うこと。人生と直結しているのです」と語る阿部さん。

あなたもこのチェックシートを使って“家のうつわの整理”をやってみてはいかがだろうか。

解説:阿部絢子さん(生活研究家) 昭和20年、新潟県生まれ。生活研究家。共立薬科大学卒業後、洗剤メーカー勤務を経て、百貨店の消費生活アドバイザーを30年間務める。著書に『老いのシンプルひとり暮らし』など多数。 撮影/宮地 工

※この記事はサライ2017年5月号より転載しました。データや肩書き等は当時のものです(取材・文/宇野正樹)

 

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