文/杉﨑行恭 写真/坪内政美
廃線となった旅客線や森林鉄道などを一部の区間で復活し、車両を動態(走れる状態)で保存している鉄道を「保存鉄道」という。今ではなかなかお目にかかれない懐かしい車両が、いまも現役で走っているのだ。そしてもちろん、乗ることができる。
そんな男心をくすぐる全国の保存鉄道の中から、いくつか選んでご紹介しよう。あなたもこれらの鉄道へ乗りに、出かけてみませんか?
※以下の記載は小学館SJムック『保存鉄道に乗ろう』(平成24年6月刊)からの転載記事です。転載にあたり構成や文章を一部改めました。写真は初出当時のものです。最新情報については公式サイトにてご確認ください。
■丸山公園の魚梁瀬森林鉄道・馬路森林鉄道(高知県馬路村)
太平洋に面した高知県東部の山林は、杉の良材が出ることで知られる。明治時代から昭和初期にかけて大規模な森林鉄道が建設され、戦前にはすでに奈半利川と安田川流域の魚梁瀬森林鉄道だけで250kmを超す路線が建設された。今の馬路村の主要道路は、そのほとんどが森林鉄道の跡だといってもいいほどの規模だった。
これが、昭和30年代に魚梁瀬ダムの建設が始まると森林鉄道での輸送がトラック輸送に切り替わり、昭和38年(1963)にすべて廃止された。そんな森林鉄道王国・魚梁瀬を記念して、平成3年(1991)に魚梁瀬ダム湖畔の『丸山公園』に森林鉄道が復元された。
もとより、地元には元森林鉄道の関係者が多く、復元の話が持ちあがると、当地に残された野村組工作所製のディーゼル機関車が動態できるよう修復された。公園を一周する408mの軌道もたちどころにできてしまったという。地元メーカーも木造客車などを争って製作するなどして、車両群も充実していった。今では機関車4両やトロッコ客車など、総勢7両を備えた保存鉄道になっている。
運転は『丸山公園』の小さな乗り場からで、地元メーカー・垣内製の谷村式機関車が主に使用され、地元の魚梁瀬杉をふんだんに使った木造客車を牽引する。ただし、公園を一周するルートだけに深山の雰囲気に欠けるが、園内には「やなせの湯」という日帰り温泉もあってアットホームな雰囲気だ。
馬路村は『丸山公園』のある魚梁瀬地区と、村役場のある馬路地区に大きく分かれていて、馬路地区にはもうひとつの森林鉄道が走っている。こちらは村営「うまじ温泉」の前から発車して渓谷を周回する軌間508mmの軽便路線で、かつて森林鉄道で活躍したポーターに似せたディーゼル機関車が、鳥かごのようなトロッコ客車を引っ張って走る。ここは森林鉄道らしく、約300mの渓谷を周回する。
また近くには、一切、燃料や電気を使わない「水力式インクライン」(水バラスト式ケーブルカー)もあり、線路好きには乗るのに忙しいエリアだ。
【施設情報】
『魚梁瀬丸山公園』
高知県安芸郡馬路村魚梁瀬
料金:入園自由
定休日:「やなせの湯」は水曜
土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線安田駅から高知東部交通バスで「魚梁瀬」下車すぐ。
車の場合は高知自動車道南国ICから約2時間20分。
【施設情報】
「馬路村森林鉄道」
高知県安芸郡馬路村大字馬路
土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線安田駅から高知東部交通バスで「馬路」下車すぐ。
車の場合は高知自動車道南国ICから約2時間。
【公式ページ】
http://www.umajimura.jp/publics/index/35/
文/杉﨑行恭 写真/坪内政美
※以下の記載は小学館SJムック『保存鉄道に乗ろう』からの転載記事です。転載にあたり構成や文章を一部改めました。最新情報については公式サイトでご確認ください。