■5:有料老人ホーム

「有料老人ホーム」といえば、これまで“お金持ちのための住まい”というイメージが強かったが、前払い金が不要なホームが出たりして、かなり身近なものとなってきている。とはいえ、まだその性格やサービスは正しく理解されていないようだ。

一般的に「有料老人ホーム」というと、介護が必要になったときに入る老人ホームで、それが「介護付き有料老人ホーム」だと理解している人がほとんどだろう。ところが、有料老人ホームはすべてが「介護付き有料老人ホーム」ではない。有料老人ホームには、「介護付き有料老人ホーム」「住宅型有料老人ホーム」「健康型有料老人ホーム」がある。

■5-A:介護付き有料老人ホーム

「介護付き有料老人ホーム」は、さらに「介護型」と「自立型」に分かれる。まず介護が必要になってから入居するのが「介護型・介護付き有料老人ホーム」で、ホームが提供する介護サービスを24時間利用することができる。このタイプは介護を受けるのが目的なので、居室は狭いワンルームタイプとなる。見学に行って「高いお金を払って、こんなに狭い部屋で暮らすのか」と驚く人もいるが、介護型だとそれが標準。プライバシーもあまり重視されない。

「介護型・介護付き有料老人ホーム」に向いているのは、「介護や見守りが必要なので、すぐに入居したい」という人だ。

一方、まだ介護が必要ではなく、自分の身の回りのことができる人しか入居できない「入居時自立型・介護付き有料老人ホーム」もある。元気な間は、マンションタイプの居室で自分の好きな生活を送ることができる。自炊したくなければ、ホーム内のレストランを利用できるし、自室で入浴したくなければ大浴場を利用しても良い。そして介護が必要になると、介護居室に移って介護を受けながら暮らすことになる。

「入居時自立型・介護付き有料老人ホーム」に向いているのは、「将来介護が必要になったときのための安心がほしいが、元気なうちは自由に暮らしたい」という人、あるいは「今は元気だが、食事の用意などの家事の心配をしたくない」という人だ。

■5-B:住宅型有料老人ホーム

では「住宅型有料老人ホーム」とはどういうものなのだろうか。前掲の「介護付き有料老人ホーム」との大きな違いは、介護サービスの利用のしかただ。「住宅型有料老人ホーム」は、生活支援などのサービスはついているものの、介護が必要となると入居者が外部事業所と契約をして、訪問介護などの介護サービスを受けることになる。

ところが実際に見学してみても「介護付き有料老人ホーム」との違いを感じることはまずないだろう。というのも、この「住宅型有料老人ホーム」は、「介護付き有料老人ホーム」に総量規制があるため、その代わりに開設したという場合が少なくないのだ。その場合、入居者は「介護付き有料老人ホーム」に入居したのと変わらないサービスを受けられるが、介護度が重くなると介護にかかる料金が高くなる可能性があるので、入居時に注意が必要だ。

■5-C:健康型有料老人ホーム

「健康型有料老人ホーム」は、介護が必要となったら退去しなければならない有料老人ホームだが、現在は数が少ない。

このように、同じ「有料老人ホーム」といっても、実態にはかなりの違いがある。有料老人ホームの広告やパンフレットには必ず「類型」として、これらのいずれかの表示があるし、「入居時の要件」として「入居時自立」「要介護」などが表記されているので、そのホームがどれに当てはまるのか確認することが大切だ。

■6:サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)

最近増加しているのが「サービス付き高齢者向け住宅」だ。「サ高住(さこうじゅう)」と呼ばれており、聞いたことのある人は多いだろう。

このサ高住というのは、生活相談サービス・緊急時対応サービス・安否確認サービスがついた賃貸住宅である。ホームヘルパーなどの有資格者が常駐しているが、介護サービスがついているわけではない。あくまでも賃貸住宅なので、介護が必要になれば外部事業所と契約して訪問介護サービスやデイサービスなどの介護サービスを受けることになる。

介護サービス事業所を併設しているサ高住も多く、一見安心なようだが、あくまで外部事業所であり、契約したサービスしか受けられないので注意が必要だ。食事は自炊するか、別料金を払えば食堂で食べることもできる。賃貸住宅だが家賃2か月分ほどの敷金が必要なほかは、礼金や更新料は不要だ。

サ高住に向いているのは、「介護がまだ必要ではないが、これからのことが不安。でもできるだけ自由な生活を送りたい」という人や、「集団生活はしたくないが、何かあったときに対応してほしい」という人だ。

■7:シニア向け分譲マンション

「サ高住」が賃貸なのに対して、分譲なのが「シニア向け分譲マンション」だ。所有権があるので、子どもに相続させることもできるが、固定資産税や管理費もかかってくる。

共用施設は充実していることが多く、食堂、大浴場、フロントなどがあり、フロントにはスタッフが常駐している。ただ、緊急時などにスタッフがどの程度対応してくれるかは、運営会社によって幅があるので入居前にしっかり確認しておきたい。介護が必要になれば介護サービスを各自が外部事業所と契約して受ける。

シニア向け分譲マンションが向いているのは、「介護がまだ必要ではないが、これからのことが不安。でもできるだけ自由な生活を送りたい」という人や、「子どもに資産として残したい」と考えている人である。

*  *  *

以上、ぜひ知っておきたい「老後の住まい」の種類と違いについて、基本的なところをご紹介した。

とくに「有料老人ホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「シニア向け分譲マンション」が特に混同されやすいようだ。まずはこれらの種別と特徴を把握した上で、入居する人のニーズや思いに合った施設の種類は何なのか、考えてみることから始めてほしい。

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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