日本では、高齢化を背景に高齢者の住まいを確保することが急務となっています。しかし、65歳以上が入居可能な賃貸物件の割合は、全体の約5%しかないといわれています。
実際に入居を拒否された高齢者はどれくらいいるのか、また、この問題を若者はどの程度知り、どのように感じているのでしょうか。
そこで、株式会社R65( https://r65.info/)は、全国の65歳以上と20〜30代の方を対象に「65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題(以下、「住宅難民問題」)」に関する調査を実施しました。
実際に入居を断られた方はどのような経験をされているのか、実態を見ていきましょう。
■高齢者は賃貸住宅の入居を断られる?
まず最初に、65歳以上の方に賃貸住居への入居を断られた経験があるかを聞いてみました。
Q. 賃貸住宅への入居を断られた経験がありますか?
はい 27.9%
いいえ 72.1%
65歳以上で実際に入居を断られる経験を持つ方が4人に1人いることがわかりました。続いて、断られた回数をたずねてみると下記のような結果に。
Q. 不動産会社に入居を断られた回数は?
□全国
1回 47.6%
2回 25.6%
3回 11.0%
4回 2.4%
5回以上 13.4%
□関東
1回 48.9%
2回 20.2%
3回 13.3%
4回 0%
5回以上 17.6%
全国で5回以上断られた経験を持つ人は13.4%もいることがわかりました。
全国と比較すると、関東圏では断られる確率が高く(約1.2倍)、5回以上断られた経験がある人も多い結果 (約1.3倍) となりました。人口の多い首都圏は、より問題解決の重要度が高い地域であることがわかります。
断られた要因としては、年齢に加え「保証人の有無」「収入」「健康度合い」などが考えられます。
■賃貸物件探しで苦労したエピソード
65歳を超えて賃貸住宅のお部屋探し経験がある方に対して、1番苦労したエピソードについてお聞きしました。
▷年齢を理由に入居を断られた
「娘が住む家の近くに住みたいと思い、部屋探ししましたが、ほとんどの物件が年齢を理由に内覧もできなかったです」
「年齢を聞いただけで『あっ無理です』と探す気も無い不動産屋や、一応電話をしてくれても嫌がっているのが電話の雰囲気でわかります。同じ事を何度も経験してめげました」▷急な立ち退きによる切迫感
「明け渡しを短期間に迫られ、どうすることもできなくて、住む所がなくなるのかと恐怖感でいっぱいになった。市会議員の人が間に入ってくれて、今がある」▷紹介された物件が劣悪な条件だった
「段差や階段の多い物件が多く、そもそも選択肢が少ない。知人がようやく借りられたのは事故物件だった」
「大丈夫と言うところがあっても古く、狭い、風呂無し、階段が狭く急なところが多く、また、陽当り悪く洗濯物を干すところがない。交通の便が悪いなど悪条件が重なるうえ、不動産屋の口の利き方が酷い」
■若年層はどう思う? 住宅難民問題
体験者のリアルな声をご紹介してきましたが、高齢者の住宅難民問題について、20代30代の若者層はどの程度知っているのでしょうか。
高齢者の住宅難民問題は知っている?
Q.あなたは、高齢者(65歳以上)がほとんどの賃貸住宅を借りられない現状を知っていますか?
65歳以上 ― はい 64.2%、いいえ 35.8%
30代 ― はい 41.4%、いいえ 58.6%
20代 ― はい 35.6% 、いいえ 64.4%
高齢者と若者では「住宅難民問題」の認知度に大きな差があることがわかりました。 「はい(知っている)」と答えた割合は、65歳以上は64.2%、30代は41.4%、20代は35.6%となり、年齢が低くなるほど「知らない」割合が高くなる傾向にあります。
高齢者のお部屋探しに関する悲痛なエピソードが語られる中、若者にとっては「遠い問題」であることが予想されます。
7割が「社会問題として周知するべき」
では、高齢者の住宅難民問題を知った若者はどのように感じたのでしょうか。
Q. あなたは、高齢者(65歳以上)が賃貸住宅に引っ越ししづらい現状に対して、どう思いますか?
( ※「とてもそう思う」「まあそう思う」を合計した割合 )
「年齢を理由に住まいを選択できないことはおかしいのではないか」63%
「自分が65歳以上になった時のことを考えると不安になる」67.8%
「高齢者の受け入れはリスクが伴うのでしょうがないと思う」53.8%
「社会問題として社会にもっと周知されるべきである」72.7%
高齢者が賃貸住宅の問題を知った若者から、危機感や改善を求める声が多くありました。「年齢を理由に住まいを選択できないことはおかしい」と答えた方は63.0%、「将来のことを不安に思う」が67.8%となりました。
また、「高齢者の受け入れはリスクがあるのでしょうがない」については、「どちらとも言えない」を含めると87.1%という結果に。オーナーの立場から考えると同情し、 “ 問題の複雑さ”を感じていることが伺えます。
両方の立場を考え、「社会課題としてもっと周知されるべき(72.7%)」という必要性を感じたのかもしれません。
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持ち家にお住まいの方は、この記事で初めてリアルな賃貸住宅問題を知った方もおられるかもしれません。高齢化が進む日本では、ますます賃貸住宅問題は深刻さが増してくることが予想されます。
また、多くの若者が「高齢者の受け入れはリスクが伴うのでしょうがない」と答えていました。 映画やテレビなどで“事故物件”を扱うことが増えていることでリスクを知り、このような結果に繋がっているのかもしれませんね。
■調査概要
調査実施期間:2020年5月6日〜5月14日
調査対象:(1)全国の65歳を超えて賃貸住宅のお部屋探し経験がある方 (2)全国の20〜30代の方
有効回答数:888名 ※(1)444名 (2)444名
調査方法:インターネット上でのアンケート調査