取材・文/坂口鈴香
いずれ自分に介護が必要になっても、できれば自宅で過ごしたいと考えているサライ世代は少なくないだろう。その一方で、高齢の親が自宅で暮らし続けられるのか、漠然とした不安を抱えている人もいるだろう。
親や自分が「常時介護が必要になった」「独り暮らしになった」「病院から退院してすぐ自宅に戻るのが不安だ」など、自宅以外で暮らす選択肢を考えるときは、いずれきっと来る。そのときにあわてて施設について調べるのでは間に合わないだろう。いざというときに備えて、老後の住まいにはどんな種類と特徴があるのか、その基本くらいは今のうちに知っておきたい。
老後の住まいは「施設」「老人ホーム」とひとくくりにできるものではなく、どんどん多様化し選択肢が増えている。そのため、何がどう違うのか、それぞれどんなところなのか、よくわからないという声を多く聞く。
そこで今回は、老後の住まいについての「基本のき」ともいえる、種類別の特徴について、ざっとおさらいしておきたい。
■1:特別養護老人ホーム(特養)
「老後の施設」と言って、多くの人がイメージするのは「特養(とくよう)」だろう。正式名称は「特別養護老人ホーム(とくべつようごろうじんほーむ)」という。要介護3以上の人が入居できる施設で、費用も他施設に比べると安価だが、その分待機者も多い。2~3年待ちのところもある。
この特養に向いているのは「高額でない施設で最期までみてほしい」という人である。
■2:介護老人保健施設(老健)
「老健(ろうけん)」という名称も、聞いたことのある人は多いのではないだろうか。正式名称を「介護老人保健施設(かいごろうじんほけんしせつ)」といい、要介護1以上の人が3か月程度を目安に在宅復帰を目指してリハビリを行う施設だ。現実には、特養に入居できるまで老健に入居して待つという人も少なくない。
老健に向いているのは「病院から退院しなければならないが、自宅に戻るのには不安がある」という人、そして「リハビリが必要」という人だ。
■3:ケアハウス
「ケアハウス」という施設もある。これは「軽費老人ホーム」の一種で、60歳以上で独立して生活するには不安のある人を対象とし、食事や日常生活のサポートを受けられる。利用料は前年度の所得に応じて自治体から補助されるため、比較的安い費用で暮らすことができる。
さらに「ケアハウス」には、身の回りのことが自分でできる人のための「自立型」と、介護が必要な65歳以上の人のための「介護型」とがある。入居するには、生活状況や介助の必要性などが総合的に審査される。
ケアハウスに向いているのは、「掃除など身の回りのことはできるが、自炊ができないし、一人での入浴が不安」な人(これは自立型)や、「独り暮らしは心細いが、家族との同居はむずかしい」という人である。
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以上の3つは公的な施設だ。一般的に「施設」と呼ばれるのは、これら公的な住まいである。
一方、民間の住まいとしては「有料老人ホーム」「グループホーム」「サービス付き高齢者向け住宅」「シニア向け分譲マンション」などがある。順に特徴を見ていこう。
■4:グループホーム
「グループホーム」とは、認知症の人を対象とした住まいである。少人数(5人から9人を1ユニットとする)の家庭的かつ落ち着いた雰囲気の中で共同生活を送ることで、認知症の進行を遅らせ、自立した生活が続けられるよう支援する生活の場だ。特養の入居待ちで利用している人も少なくない。
グループホームに向いているのは、「認知症で、自宅で暮らすのに不安がある」人や、「家庭的な雰囲気の中で暮らしたい」という人である。
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