寺田さんの状況を知った曽根さんは、「争いを避けるためにも、寺田さんの貢献度を評価するためにも、寺田さんが相続人の立場に戻り、適切な遺産分割協議をしたほうがいい」とアドバイスした。
曽根さんによれば、相続放棄をしても、相続人として復活する方法はあるという。それは、一定の条件(だまされた、勝手に相続放棄されたなど)で相続放棄しており、それに気が付いてから6か月以内であれば、相続人に戻れるというもの。手続きは家庭裁判所で行われ、寺田さんの場合は認められる可能性が高いと曽根さんは解説した。
結局、寺田さんは家庭裁判所に相談し、相続放棄の取り消しをすることができ、相続人の立場が認められたという。こうした経緯を知る兄と姉は、今度は寺田さんの言い分を聞いてくる状況となった。そして、兄と姉の紛争を未然に避けるために、相続のプロの助言に従いつつ兄と姉の間に立ち、法定割合を目安とした遺産分割を行うことができたという。
最後に曽根さんのアドバイスを聞こう。
「もし相続放棄をしても、相続人として一定の条件があれば復活できます。とはいえ、相続放棄をするときは慎重に。詳細を確認してから行いましょう」
監修・曽根惠子さん
夢相続 代表。PHP研究所勤務後、不動産会社設立し、相続コーディネート業務を開始。1万3000件以上の相続相談に対処、感情面、経済面に即したオーダーメード相続を提案。『相続はふつうの家庭が一番もめる』(PHP研究所)、『相続に困ったら最初に読む本』(ダイヤモンド社)、『相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル』(幻冬舎MC)ほか著書多数。
取材・文/沢木文
イラスト/上田耀子