誰もが見て「カワイイ!」と声を発するであろう国宝『鳥獣人物戯画』(京都・高山寺蔵)は、絵巻なのに詞書がない不思議な絵巻である。それなのに、なぜか違和感はない。それは「絵」が私たちに饒舌に語りかけてくるからだ。

詞書なき絵巻『鳥獣人物戯画』の魅力はどこにあるのだろうか。

『週刊ニッポンの国宝100』p26-27「国宝名作ギャラリー」より

『鳥獣人物戯画』は甲巻・乙巻・丙巻・丁巻の4巻から構成される。甲巻と乙巻は12世紀後半、丙巻・丁巻は13世紀半ばまでに成立したとされ、各巻で筆致が違うことから複数の絵師によるものだといわれている。これだけ有名なのに、誰がいつ、何のために描いたのかはわかっていない。

『鳥獣人物戯画』の中には、日本人が大好きなものがたっぷりつまっている。

日本人は犬や猫などの小動物が大好き。『鳥獣人物戯画』の主要キャラクターは全部動物。甲巻に描かれた動物は、ウサギ、カエル、猿、狐、猫、ネズミ、キジ、テン、鹿、イノシシ、ミミズクの11種類。彼らが所せましと動き回る。

次に、擬人化されていること。「艦これ」とか「刀剣乱舞」とか、とにかく日本人は擬人化が大好き。その元祖が『鳥獣人物戯画』だ。ウサギとカエルが相撲を取ったり、猿が読経したりと、人間そっくりの行為をしながら、それでいて、ちゃんと動物なのだ。そこが人を魅了する。

その表情やしぐさにも個性があって、こいつはずるがしこい、こいつはおっちょこちょいか? といったキャラ立ちも感じられる。ちなみに、鹿、イノシシ、ミミズクは擬人化されていない。なぜなのかはいまだ不明のままだ。

そして、墨1色で書かれた白描の絵がまるでマンガそっくりなこと。動物たちのユーモラスな表情としぐさに多くの人が思うはずだ、「吹き出し入れたい……」と。

そこまで人を魅了するのは、筆遣いが超絶上手いから。とくに見事なのが甲巻で、キャラクターたちのはつらつとした動きや軽妙なしぐさ、真剣な表情などが、柔らかな描線でのびのびと描かれている。

『週刊ニッポンの国宝100』(小学館)第6号「姫路城・鳥獣人物戯画」では、『鳥獣人物戯画』の一部のキャラクターが吹き出し入りの原寸で鑑賞できる。

【開館120周年記念特別展覧会 国宝】
■場所:京都国立博物館(京都・東山)
■開催期間:10月3日(火)~ 11月26日(日)
■開館時間:9時30分~17時(入館は閉館の30分前まで。ただし金曜・土曜は21:00まで開館)
■休館日:月曜(ただし10月9日(月)は開館、10日(火)休館)
■料金:一般 1500円
■問い合わせ先:075-525-2473(テレホンサービス)

【週刊『ニッポンの国宝100』特設サイト】
http://www.shogakukan.co.jp/pr/kokuhou100/

『週刊日本の国宝100』第6号「姫路城/鳥獣人物戯画」 (小学館)

取材・文/まなナビ編集室

※この記事は小学館が運営している大学公開講座の情報検索サイト「まなナビ」からの転載記事です。
大学公開講座のまなナビ|小学館の公開講座検索サイト (http://mananavi.com/

 

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