東山魁夷《緑響く(みどりひびく)》〔昭和57(1982)年 長野県信濃美術館 東山魁夷館蔵〕

東山魁夷《緑響く(みどりひびく)》〔昭和57(1982)年 長野県信濃美術館 東山魁夷館蔵〕

戦後の日本画を代表する作家のひとり、東山魁夷(ひがしやま・かいい、1908-1999)の展覧会が、九州国立博物館で開催されています。

風景画の第一人者とも目されている東山魁夷。自身も著作『日本の美を求めて』のなかで、「風景によって心の窓が開けた体験を、私は戦争の最中に得た。自己の生命の火が間もなく確実に消えるであろうと自覚せざるを得ない状況の中で、初めて自然の風景が、充実した命あるものとして眼に映った。強い感動を受けた。それ迄の私だったら、見向きもしない平凡な風景ではあったが……」と、風景画家としての原点を述べています。

命の極限から生まれた東山魁夷の清冽な風景画は、観る者の心を洗ってくれます。

東山魁夷展・ 道

東山魁夷《道(みち)》〔昭和25(1950)年 国立近代美術館蔵〕

本展の見どころを、九州国立博物館・特任研究員の臺信祐爾さんにうかがいました。

「戦後の日本画、なかでも風景画に新境地を開いた東山魁夷。彼は徹底した自然観察をもとに、内面的深さを感じさせる静謐な風景を生涯描き続けました。

本展では、画家の代表作である《道》(1950)年にくわえ、ヨーロッパや京都の面影を描いた風景画など、約80件にのぼる名品の数々を通して、「国民作家」と呼ばれた東山魁夷の画業の全貌をたどります。

本展のハイライトは、東山魁夷の最高傑作で、構想から完成まで10年を要した、奈良・唐招提寺御影堂の障壁画です。御影堂内部をほぼそのままに再現し、全障壁画を通期で展示します」

今後数年かかる建物修復工事のためしばらくは現地での御影堂障壁画の拝観はできません。この機会をお見逃しなく。

会期中、大規模な展示替えを予定しています。詳細はHPにてご確認ください。

【特別展 東山魁夷 自然と人、そして町】
■会期/2016年7月16日(土)~8月28日(日)
■会場/九州国立博物館
■住所/福岡県太宰府市石坂4-7-2
■電話番号/050・5542・8600(ハローダイヤル)
■料金/一般1600(1400)円 大高生1000(800)円 中小生600(400)円 ( )内は20名以上の団体料金 ※65歳以上(要証明書)は1400円、障がい者手帳所持者と介護者1名は無料
■開館時間/9時30分から17時まで(入館は16時30分まで)
■休館日/月曜日(ただし7月18日、8月15日は開館)、7月19日(火)
■アクセス/西鉄太宰府駅より徒歩約10分、天満宮参道より虹のトンネル(動く歩道)使用

取材・文/池田充枝
1989年「サライ」の創刊時より歴史資料の調査や展覧会情報を中心にフリーランスで「サライ」の取材・執筆に携る。

 

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