万年筆の可能性が作品づくりを大きく変える
古山「顔料インクの次は、ペン先に着目しました。万年筆の職人さんを訪ねて知ったのですが、ペン先の研ぎ方次第で、0.13ミリという超極細の文字から6ミリもの極太文字まで字幅を調整できるんです。これなら僕の好きな万年筆を使って思い通りの絵が描ける。たいそう感激しました。
おまけに、職人さんに研いでもらったペン先が書きやすいのなんの。それまでの万年筆に対する概念が完全にくつがえされ、万年筆は自由にどんな線でも描けると確信しました。そこから一気に万年筆にのめり込みました」
--筆記具というより画材に近い存在になったのですね。
古山「それまではアクリル画をやっていましてね。絵を描くうえでは色が重要で、絵画における“線”というものに重きをおいていませんでした。ところが、万年筆で自在に線を描くことができるようになると、それまでの僕の線がどんどん変化していったのです。万年筆で描いたインクの線が、内在していた想像力を喚起してくれ、自分のイメージをさらに深めてくれる。そんな感じでした。
そして、いつのまにか絵描きとしての立脚点まで変わっていました。万年筆の自在な線に導かれて、ものの見え方が違ってくる。すると当然ながら、表現も変化する。万年筆のおかげで、絵描きとしてのステージが三段階くらい広く深くなったような気がします」
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