モンブランといえば、サライ世代にも馴染み深いであろう筆記具のトップブランド。いつの時代も憧れの存在である。その上質さや完成度の高さを、実際に体験してこられた方も多いにちがいない。
そのモンブランであるが、1992年より毎年1人の作家を取り上げ、彼らの功績を讃えるハンドクラフト仕上げの「作家シリーズ」を発表している。筆記文化の担い手を自負する同社にとって、言葉の力を駆使して人類の思想に多大な影響を与えた偉大な作家に敬意を表すことは当然の文化的責務であるという。
26作目となる2016年モデルは、没後400年を記念してウィリアム・シェイクスピアの功績を讃えるコレクションとなった。万年筆、ローラーボール、ボールペン、メカニカルペンシル(セット販売のみ)がラインナップされた白と黒の「通常エディション」に共通する八角形のキャップは、シェイクスピアの戯曲が数多く初演された「聖地」グローブ座の屋根をかたどったものである。
さらに「通常エディション」とは別に、万年筆には、漆黒と深紅、ロイヤルブルーをまとった限定1,597本の重厚な「リミテッドエディション 1597」が用意されている。名称は、「ロミオとジュリエット」が出版された1957年にちなんだものである。
配色もシェイクスピアゆかりのもの。コメディ上演時にグローブ座に掲げられた白い旗、悲劇上演時の黒い旗、歴史劇上演時の赤い旗、さらにシェイクスピアが活躍した時代に王族や貴族、政治家だけが身につけたロイヤルブルーを再現するというこだわりぶりだ。
ボディを取り巻くエンボス加工のゴールドリングには、シェイクスピアの7つの代表作があしらわれている。「ロミオとジュリエット」はバラと短剣立て、「ハムレット」はどくろ、「リア王」は2つのチェスのコマ、「ヘンリー5世」は兜、「マクベス」は王冠、「テンペスト」は渦巻く雲、「ジュリアス・シーザー」はCの字をかたどった月桂樹で、それぞれシンボライズされているのだ。
そしてペン先には「ロミオとジュリエット」の有名なバルコニーのシーンが描かれている。
シェイクスピアのファンならずとも惹かれる、この特別な万年筆。モンブランの「作家シリーズ」は再生産を行わず、生産が終了すると仕様書や型も破棄するという。厳密に守られた確かな価値を、手に取ってみてはいかがだろうか。
[通常エディション]
万年筆(ペン先…F/M):115,000円
ローラーボール:95,000円
ボールペン:90,000円
セット(万年筆、ローラーボール、メカニカルペンシル):305,000円
セット(万年筆、ボールペン、メカニカルペンシル):295,000円
[リミテッドエディション 1597]
万年筆(ペン先…F/M):480,000円(世界限定1,597本)
【参考リンク】
http://www.montblanc.com/
取材・文/奥旅男