2020年、世界最高水準の安全・安心・楽しい機能を誇る車たち。
その中から、いま評判の「いい車」に試乗してみた。
今回は、メルセデス・ベンツ A200dとBMW 320dの2台を紹介する。
振動を最小限に抑え、力強く走る ディーゼルエンジン搭載の小型車
メルセデス・ベンツ/A200d

小型ハッチバックAクラスの4世代目。周囲の交通状況に応じて加減速、操舵、車線変更を支援する。燃料代が安いディーゼル車のほか、1.3Lと2Lのガソリン車がある。
原動機 ディーゼルターボエンジン 全長×全幅×全高 4420×1800×1420mm ホイールベース 2730mm 車両重量 1470kg エンジン排気量 1949cc 乗車定員 5名 最高出力 150PS 最大トルク 32.6kg-m 燃料消費率 18.8km/L(WLTC モード) 燃料 軽油・43L 車両価格 406万円(税込み・A200d) 問い合わせ メルセデス・ベンツ 0120・190・610
【歴史】Aクラス(初期型) 1997~2005年

初代Aクラスは将来の電動化を見越して床下に電池搭載空間を備えていた。熟成を経て評価も上昇。
欧州の自動車アセスメント「Euro NCAP」(ユーロエヌキャップ)で最高位の評価(5つ星)を獲得(2018年)。本特集で紹介する中でも随一の安全性能を誇る。
座ると、大ぶりな座席が背中とお尻を包み込むように受け止める。走ってみると、高速道路で凸凹の継ぎ目を越えるときなどに、車体やサスペンションの質の良さに気づく。ゆったりと衝撃を吸収し、まるで大型の高級車に乗っているかのような乗り心地だ。
ところで、小型車なのに、なぜディーゼルエンジン搭載なのか。
ディーゼルの特徴は、力強さにある。ガソリンエンジンよりも低いエンジン回転域から力(トルク)を発揮できるため、ほんの少しアクセルを踏むだけで、力強く加速。高速道路でも、低回転数のままで運転でき、振動が少ないので、長距離走行でも疲れにくい。
特筆すべきは、小回りが利くこと。車庫入れで切り返すことも少なく、住宅街の路地も走りやすい。

音声操作機能を搭載。運転中に「はい、メルセデス」と呼びかけると、ナビの目的地設定や温度調整をしてくれる。

「車線変更支援機能」を使用中の様子。ウィンカーレバーに軽く触れるだけで、車が自動的にハンドルを操作し、車線変更を支援してくれる。

荷室は左右104cm、高さ80cm、奥行き137cm。後席を倒すと、奥行きは165cmとなり、長尺物も収納することができる。

出足から力強いトルクとスムーズな吹け上がりが味わえる。ディーゼルといわれなければ気がつかないほど車内は静かだ。
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高速道路の渋滞でも疲れにくい ドイツらしい正統派のセダン
BMW/320d

山道も高速道路の長距離走行も余裕でこなす、力強いディーゼルターボエンジン搭載のセダン。BMW伝統の走りの快活さに加え、最高水準の予防安全装備を備える。
原動機 ディーゼルターボエンジン 全長×全幅×全高 4715×1825×1450mm ホイールベース 2850mm 車両重量 1680kg エンジン排気量 1995cc 乗車定員 5名 最高出力 190PS 最大トルク 40.8kg-m 燃料消費率 15.3km/L(WLTC モード) 燃料 軽油(タンク容量不明) 車両価格 614万円 (税込み・xDrive Mスポーツ) 問い合わせ BMW 0120・269・437
【歴史】1500シリーズ 1962~1972年

1960年代、高品質・高性能なスポーティセダンとして登場。現在のBMWの基礎を作った名車だ。
3シリーズは昨夏、世界で初めて「ハンズ・オフ」(手ばなし運転)ができる車として登場した。
日産/スカイラインGTとは異なり、この車の“手ばなし”機能は、高速道路の渋滞専用の設計。「高速道路の渋滞時、時速60km以下」が、手ばなし運転モードの条件だ。しかし実際に試乗してみると、車間距離がそこそこある渋滞では、手ばなし運転を許す「ASSIST PLUS(アシスト プラス)」という表示がなかなか出ない。ようやく体験できたのは、時速30km以下の首都高速の渋滞で、周囲に車がぎっしりという状況下だった。
要は楽をするための機能ではなく、ひどい渋滞時にのみドライバーの負担を軽減する運転支援装置なのだ。高速道路での伸びのいい加速や、山道でのコーナリングなどでは、運転を楽しんでほしい、とドイツの名門BMWは考える。
ディーゼルエンジンを搭載した320dは4WDなので、雨天走行時の安定感もすこぶる高い。まるでカーペットの上をなぞるような滑らかな乗り心地、切れ味のいいハンドリング。鮮烈な先進機能に目がいくが、まず第一に運転することの悦びを考えた、ドイツらしい質実剛健な高級車である。

高速道路の渋滞時、ペダル操作に加え、ハンドル操作も自動で行なう「ハンズ・オフ」機能。ただし、作動条件は限定される。

体をしっかりと支える運転席。ロングドライブでの疲労も少ないが、小柄な人には、少し大きく感じるかもしれない。

荷室の左右は最大140cm、最小99cm。奥行きは100cmで、リアシートを倒せば最大164cmに。開口部は52cmと高く、使いやすい。

静粛性が高く、欧州では定評の高いBMWのディーゼルエンジン(4気筒)。BMW伝統の直列6気筒をしのぐ人気ぶり。
※この記事は『サライ』本誌2020年3月号より転載しました。(取材・文/櫻井 香、佐藤篤司、石川真禧照 撮影/尾形和美、小池義弘、篠原晃一、萩原文博、佐藤靖彦)
