2020年、世界最高水準の安全・安心・楽しい機能を誇る車たち。
その中から、いま評判の「いい車」に試乗してみた。
今回は、メルセデス・ベンツ A200dとBMW 320dの2台を紹介する。
振動を最小限に抑え、力強く走る ディーゼルエンジン搭載の小型車
メルセデス・ベンツ/A200d
【歴史】Aクラス(初期型) 1997~2005年
欧州の自動車アセスメント「Euro NCAP」(ユーロエヌキャップ)で最高位の評価(5つ星)を獲得(2018年)。本特集で紹介する中でも随一の安全性能を誇る。
座ると、大ぶりな座席が背中とお尻を包み込むように受け止める。走ってみると、高速道路で凸凹の継ぎ目を越えるときなどに、車体やサスペンションの質の良さに気づく。ゆったりと衝撃を吸収し、まるで大型の高級車に乗っているかのような乗り心地だ。
ところで、小型車なのに、なぜディーゼルエンジン搭載なのか。
ディーゼルの特徴は、力強さにある。ガソリンエンジンよりも低いエンジン回転域から力(トルク)を発揮できるため、ほんの少しアクセルを踏むだけで、力強く加速。高速道路でも、低回転数のままで運転でき、振動が少ないので、長距離走行でも疲れにくい。
特筆すべきは、小回りが利くこと。車庫入れで切り返すことも少なく、住宅街の路地も走りやすい。
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高速道路の渋滞でも疲れにくい ドイツらしい正統派のセダン
BMW/320d
【歴史】1500シリーズ 1962~1972年
3シリーズは昨夏、世界で初めて「ハンズ・オフ」(手ばなし運転)ができる車として登場した。
日産/スカイラインGTとは異なり、この車の“手ばなし”機能は、高速道路の渋滞専用の設計。「高速道路の渋滞時、時速60km以下」が、手ばなし運転モードの条件だ。しかし実際に試乗してみると、車間距離がそこそこある渋滞では、手ばなし運転を許す「ASSIST PLUS(アシスト プラス)」という表示がなかなか出ない。ようやく体験できたのは、時速30km以下の首都高速の渋滞で、周囲に車がぎっしりという状況下だった。
要は楽をするための機能ではなく、ひどい渋滞時にのみドライバーの負担を軽減する運転支援装置なのだ。高速道路での伸びのいい加速や、山道でのコーナリングなどでは、運転を楽しんでほしい、とドイツの名門BMWは考える。
ディーゼルエンジンを搭載した320dは4WDなので、雨天走行時の安定感もすこぶる高い。まるでカーペットの上をなぞるような滑らかな乗り心地、切れ味のいいハンドリング。鮮烈な先進機能に目がいくが、まず第一に運転することの悦びを考えた、ドイツらしい質実剛健な高級車である。
※この記事は『サライ』本誌2020年3月号より転載しました。(取材・文/櫻井 香、佐藤篤司、石川真禧照 撮影/尾形和美、小池義弘、篠原晃一、萩原文博、佐藤靖彦)