2020年、世界最高水準の安全・安心・楽しい機能を誇る車たち。
その中から、いま評判の「いい車」に試乗してみた。
今回は、DS DS 3 クロスバックとフォルクスワーゲン パサートの2台を紹介する。
座り心地よく、走りはしなやか。いかにもフランスらしいSUV
DS/DS 3 クロスバック
【歴史】シトロエン/DS 1955年~1976年
DS 3 クロスバックは、フランス車伝統の合理的な作りに加えて、豪奢な演出が満載。外観は彫刻刀で削り出したような面と、宝石のように輝くライト類、彫りの深い顔を誇る。かつてのSUVにあった「道具」感はない。
室内も同様。ルーブル美術館のガラスピラミッドから着想を得たという、菱形デザインのスイッチ類やシートのステッチが印象的だ。それでも嫌味に感じないところが、美の先進国フランス流の洗練。
運転してみると、第一印象としてはふんわりと柔らかく感じる。しかし、それでいて揺れを速やかに収める、しっかりした乗り味である。荒れた路面や石畳などで磨かれた足回りと、ふんわりと体を受け止めるシートのおかげだろう。
安全装備も抜かりなし。高速道路で便利なクルーズコントロール(車速・車間維持機能)に加え、車線内の右寄り・中央・左寄りのいずれかを走るかまで選択できる、車線維持機能が付く。
長時間の運転でも疲れにくい。ほかの自動車メーカーにはない個性と乗り心地の良さが、適度に気分をリフレッシュさせてくれるからだろう。
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名車ゴルフよりも長い歴史を誇る ドイツ人自慢の質実剛健セダン
フォルクスワーゲン/パサート
【歴史】パサート(初期型)1973~1981年
パサートは、日本ではそれほど有名ではないが、じつは同じフォルクスワーゲンの名車ゴルフよりも歴史が長い。飾り気は希薄だが、簡素で清潔感のある外観・内装は、国産車を愛用してきた人にもなじみやすいデザインだろう。
運転席に座ると、広いフロントガラスによる見晴らしの良さ、車体の見切りの良さが一目瞭然。駐車時の取り回しもしやすい。後席は足を組めるほど広々としている。荷室は、大きな旅行鞄やゴルフバッグを積んだ後に、お土産をたくさん積めるくらいの余裕がある。
乗員空間と荷室が別々で、車外の音が聞こえにくいのも、セダンならではの利点。ガソリンエンジンも選べるが、ディーゼルエンジン仕様の乗り味がとてもよい。遮音性の高さのおかげで、もともと静かなディーゼルの音がまったくといっていいほど気にならない。
高速道路で、クルーズコントロール(車速・車間維持装置)や車線維持機能のサポートを受けながらゆったり走っていると、燃料計がなかなか減らない。無給油で900km以上も走れる燃費性能をカタログ上で誇る優等生である。
セダンという王道の良さを楽しむなら、最適の一台だといえよう。
※この記事は『サライ』本誌2020年3月号より転載しました。(取材・文/櫻井 香、佐藤篤司、石川真禧照 撮影/尾形和美、小池義弘、篠原晃一、萩原文博、佐藤靖彦)