文/石川真禧照(自動車生活探険家)
昨年の新車乗用車販売の3台に1台は「軽」というほど、近年人気が高まっている軽自動車。その人気の秘密を探ろうと、広くて高燃費、運転支援技術や安全装備も充実の最新軽自動車に乗ってみた。
軽自動車は日本独自の規格である。その歴史は古く、昭和29年に軽自動車の排気量がすべて360cc以下に改正されて以降、SUBARU(富士重工)、スズキ(鈴木自動車)、ダイハツ工業、マツダ(東洋工業)、三菱自動車(三菱重工業)の各社が開発。なかでも三菱は昭和34年に軽三輪トラック、レオ、昭和36年に「広く、低く、美しく」を謳った軽ライトバン、三菱360を発売し、軽自動車の歴史に確固とした足跡を残してきた。
現在の軽自動車の法定規格は車体の全長が3.4mm以下、全幅1.48m以下、全高2m以下、エンジン排気量は660cc以下。この規格のなかで最大限の性能を追い求めてつくられた軽自動車は、日本の自動車の歴史のなかで常に重要な位置を占めている。
後席の広さは大型セダン並み
三菱のeKクロスは、日産自動車との共同開発が生んだ軽自動車である。開発は主に日産自動車が受け持ち、車体の骨格やエンジンなどが新しく設計された。
10年ほど前までは、税金や保険など諸経費の安さ、燃費の良さが軽自動車購入の主なる動機だった。ところが近年は、そうした経済的利点に加えて、車体の色やスタイル、外観を重視する人が増えているという調査結果が出ている。eKクロスは、昨今のそのような潮流を意識して、共同開発のベース車両に、三菱自動車が独自のデザインを施している。
全高1.66mと背が高く、「ハイトワゴン」という車種に分類される。エンジン排気量は660ccで、自然給気、ターボ、ハイブリッドFF車、4WD車など、すべてのタイプが用意されている。
乗って驚くのは、後席が広いことだ。室内高が1.27mと高く、頭上に余裕があり、足元がとにかく広い。前席を後ろにスライドさせても、後席で足を組めるほどで、大型セダン並みの広さだ。大人4名が楽に座ることができ、後席を折り畳めば広い荷室にもなる。
運転支援技術や安全装備にも先進技術が盛りこまれている。高速道路では、ハンドル右側のスイッチで巡航走行の車速(約3~100km/h)を設定すると、車両がアクセル、ブレーキ、ハンドル操作を支援してくれる。先行車の加減速に合わせて車間距離を自動で調整し、先行車の停止に合わせて、こちらも停止する。再発進はハンドルのスイッチを押すか、アクセルペダルを軽く踏むだけでエンジンが掛かり、走り出す。また、道路の白線を検知し、車線のはみ出しを警告してくれたり、滑りやすい路面での発進や加速を助けてくれる装置も付いている。
今回の試乗では信号の多い街中や軽が苦手とする高速走行でカタログ値より燃費が良いことも多かった(実燃費14.7~18.3km/L)。生活の道具としての使い勝手は申し分ない。軽自動車は、日本が誇るエコカーといえる。
【三菱/eKクロス T 4WD】
全長× 全幅× 全高:3395×1475×1660mm
ホイールベース:2495mm
車両重量:920kg
エンジン/モーター:直列3気筒DOHCターボ/交流同期モーター
最高出力:64PS/5600rpm:2.7PS/1200rpm
最大トルク:10.2㎏-m/2400~4000rpm:4.1㎏-m/100rpm
駆動方式:4輪駆動
燃料消費率:16.8/L(WLTCモード 市街地:14.3km/L)
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 27L
ミッション形式:自動無段変速機(CVT)
サスペンション:前/ストラット 後/3リンク
ブレーキ形式:前:ディスク 後:ドラム
乗車定員:4名
車両価格:163万5000円
問い合わせ:お客様相談センター:0120・324・860
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2019年10月号より転載しました。