文/石川真禧照(自動車生活探険家)
昨今、世界中の自動車メーカーが電気自動車(EV)の開発に力を入れている。
国産EVの草分け的存在である日産リーフに新モデルが加わった。初代発売から9年を経て進化した同車の魅力を探る。
日産リーフは、2010年末に発売された電気自動車(以下、EV)である。2017年に全面改良され、現行モデルは2代目。
バッテリーとモーターの力だけで走るEVは、走行中に有害物質を出さないことから、次世代の乗り物として注目されている。世界的にも評価が高く、とりわけ中国や北米での販売台数が多い。
リーフは日本での発売後、世界展開を図り、現在は50以上の市場で販売。この春、新車の世界累計販売台数は40万台を超えた。
EVは街中など短距離使用の小型車か、大容量のバッテリーを大きな車体に積んだ高級志向の大型車としてつくられることが多い。その点、日産は街乗りやロングドライブなど距離に関係なく運転を楽しめる小型の実用車としてリーフを開発したが、それは技術的にハードルの高い目標だった。特にバッテリーの性能が低かった初期型は、日産本社のある横浜から都心まで片道約35kmを往復すると充電量は半減。航続距離の短さが指摘された。
そこで、日産はリーフの走行性能を向上させることに注力。新たに開発した大容量で高エネルギー密度のバッテリー(62kWh)と、高出力・高トルクのモーターなどのパワーユニットを搭載したモデルを今年の1月に追加した。それが今回紹介するリーフe+(イープラス)である。
航続距離が飛躍的に向上
走行性能を大幅に強化した同車は、航続距離が従来モデルより約40%も延びている。カタログに記載された満充電の航続距離は、国際的な燃費試験方法(WLTC)による数値で458kmに達した。
300kmの長距離運転でも、無給電でドライブを楽しめる
新型リーフe+で東京から山梨県の富士五湖周辺まで試乗した。片道約130km、そのうち高速道路は約100kmという行程だ。
運転席に座り、計器盤を見ると充電は100%、航続可能距離は417kmと表示されている。
街中を抜け、高速道路の入口を目指す。リーフは何より優れた加速が魅力だ。また、アクセルペダルの踏み加減を調整するだけで、発進、加速、減速、停止まで行なう「eペダル」と名付けられたシステムを搭載する。
アクセルペダルから足を離すと回生ブレーキが効き、減速とバッテリーへの充電を行なう。そのままペダルから足を離し続けると、時速100kmでの走行からでも車が停止するほど強烈な回生ブレーキが作動する。これを積極的に使いながら走ると、バッテリーの充電量はさほど減らず、安心して長距離ドライブを楽しむことができる。もし走行可能距離が減った時は、最寄りの日産販売店やサービスエリアなどに設置されている急速充電器を利用すればよい。
往復約300kmの試乗で、リーフe+は一度も充電することはなかった。最新のEVはかなり実用的になってきたようだ。
【日産/リーフ e+ G】
全長× 全幅× 全高:4480×1790×1545mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1680kg
モーター:交流同期電動機 85kW
最高出力:218PS/4600~5800rpm
最大トルク:34.7kgf-m/500~4000rpm
駆動方式:前輪駆動
航続距離:458㎞(WLTCモード)
燃料消費率:12.9km/L(JC08 モード)
ミッション形式:電気式無段変速機
サスペンション:前/ストラット 後/トーションビーム
ブレーキ形式:前・後/ベンチレーテッドディスク
乗車定員:5名
車両価格:472万9320円(消費税込み)
問い合わせ:お客さま相談室 電話:0120・315・232
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2019年6月号より転載しました。