文/編集部
バロック絵画の巨匠として名高いヨハネス・フェルメール(1632-1635)。現存する作品は35点しかなく、その希少性から1作品でも来日すれば展覧会が成立するほどだが、今年10月5日から東京・上野の上野の森美術館で開催される『フェルメール展』には9点も来日(同時期に見られるのは8点)されるということで、過去最大規模のフェルメールの展覧会になると話題を集めている。
その展覧会に先立ち、フェルメールの画集『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』(小学館)が刊行された。その名の通り、現存するフェルメール作品35点すべてを「原寸大」で見ることができるという、画期的な画集である。
「光の魔術師」とも称される画家フェルメールの真骨頂は、リアリティを追求した卓越した描写テクニックにあるが、その実態は原寸大にまで拡大することによって初めて確認できるものが多い。同書では、作品によっては150%、200%など原寸以上に拡大した図版で、じっくりとその繊細な秘技を鑑賞・観察できる。
光をあらわす細かな点描や、表面の絵具の盛りや割れ目まではっきり見え、フェルメールの超絶技巧をあらためて“発見”できるというわけだ。
さらに同書では、フェルメールを知る上でキーワードとなる6つのテーマに沿って、全作品の見どころを詳細に解説。原寸図版とあわせて、漫然と観賞するだけではなかなか気がつかないような、絵の細部に秘められた謎を読み解く楽しみも得られる。
美術印刷の分野でとくに定評の高いNISSHAによる、迫真の超美麗印刷もこの画集の大きな魅力のひとつだ。
フェルメール全作品のサイズの違いが一覧表示で実感できるのも面白い。
ページをめくるごとに、驚くべき発見が得られるフェルメールの画集『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』。もし仮に真作を目の前にしても、これだけ接近して観賞することはなかなか困難だろう。『フェルメール展』に出かける前の予習にも格好の一冊と言える。
『フェルメール原寸美術館 100% VERMEER!』
監修:千足伸行(成城大学名誉教授・広島県立美術館館長)
A4判 並製 200ページ 定価 本体3000円+税
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文/編集部