愛するマッカランを個人輸入していた白洲次郎【ウイスキーよもやま話11】

文/矢島裕紀彦

吉田茂の懐刀ともいわれた白洲次郎は、ことウイスキーに関しては、吉田をしのぐものがあった。

ケンブリッジ大に学んで現地の上流階級の子弟と親しく交流した白洲は、帰国後、友人のアンクル・ロビン(ストラットフォード伯爵)から、樽でウイスキーを送ってもらっていた。イギリスの貴族の中には、造り酒屋から貯蔵前のウイスキーを樽で買いつけ、自身の屋敷内の蔵で何十年も寝かして熟成させ、頃合いを見計らって飲む者も少なくなかったらしい。

市販のウイスキーでは、白洲は英国のマッカランを好んだ。これは、リリー・フランキーさんに聞いた話だが、あるバーに、古い時代のマッカランのボトルがあって、その裏側には「輸入者 白洲次郎」とあり個人宅の住所が記されていたという。まだ、正規の輸入代理店がなかったころ、個人で輸入して飲んでいたことの証左だろう。

お気に入りのうまいウイスキーを飲むために、そこまでしてしまう白洲次郎。やはり、並みの人物ではないのである。

文/矢島裕紀彦
1957年東京生まれ。ノンフィクション作家。文学、スポーツなど様々のジャンルで人間の足跡を追う。著書に『心を癒す漱石の手紙』(小学館文庫)『漱石「こころ」の言葉』(文春新書)『文士の逸品』(文藝春秋)『ウイスキー粋人列伝』(文春新書)『夏目漱石 100の言葉』(監修/宝島社)などがある。2016年には、『サライ.jp』で夏目漱石の日々の事跡を描く「日めくり漱石」を年間連載した。

※本記事は「まいにちサライ」2014年11月15日配信分を転載したものです。

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