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若冲や応挙も学んだ中国・明清絵画の名品を味わう展覧会

余崧(よすう)「百花図巻」(部分) 清時代・乾隆60年(1795) 静嘉堂文庫美術館蔵

取材・文/藤田麻希

日本の美術は、その時代ごとに、中国や朝鮮など大陸の美術の影響を受けてきました。鎖国政策がとられていた江戸時代においても、長崎を通じて中国の新しい文化は入ってきています。

17世紀中頃、明からやってきた隠元和尚が、京都の宇治に黄檗宗万福寺を創建し、中国の文化を伝えました。また、1684年に、清朝が自由貿易を禁じていた遷海令を解き、1697年には30年にわたる中国絵画の輸入禁止令が解除され、明時代、清時代の絵画が大量に日本に流入します。

それらは日本の絵師にとって憧れの存在でした。伊藤若冲、円山応挙なども、現物や模写を見る機会を探して、よく勉強しており、明清絵画がなければ、江戸絵画の歴史は大きく変わっていたのではないか、とも言われています。

*  *  *

現在、そんな明清絵画の優品を集めた展覧会が、東京の静嘉堂文庫美術館で開催されています。

同館の明清絵画のコレクションの特徴は、1911年に中国で辛亥革命が起きる以前に日本に渡ってきていた「古渡(こわたり)」の作品が多いこと。そのため、当時の画家の模写や、作品を見た人が感想を書いた跋文などと共に作品が残っており、大変貴重です。

沈南蘋(しんなんぴん)「老圃秋容図」 清時代・雍正9年(1731) 静嘉堂文庫美術館蔵

長崎に1年10か月滞在した沈南蘋(しんなんぴん)は、中国ではさほど有名な画家ではなかったのですが、日本ではそのリアルな画風が「南蘋派」という流派を誕生させるほど、ブームになります。中国で長寿の意味を持つ猫を描いた「老圃秋容図」は、南蘋が来日前後に描いたことがわかっている重要な作品。江戸画壇の重鎮・谷文晁派の画家による模本も残されています。

静嘉堂文庫美術館館長の河野元昭さんは、次のようにこの作品に魅力を説明します。

「沈南蘋の絵には、当時の日本になかった、西洋絵画にも通じるリアリズムがあります。それが、ちょうど実証主義的な精神が芽生えてきた18世紀の社会にフィットして、人気を呼びました。猫には、かわいいとちょっと怪しいの2つの魅力がありますが、この猫には両方が表現されていると思います。これこそリアリズムですね、本当によく描けています」

次は、明時代末から清時代初頭に活躍した藍瑛(らんえい)という画家が、元時代末の四大家の一人で、文人画家に人気の高かった王蒙(おうもう)の画風に倣った山水図。江戸時代後期の儒者で、書画家の貫名海屋(ぬきなかいおく)の跋文とともに、こちらにも谷文晁の模写が付属しています。

落款印章もそっくりに写すほど瓜二つですが、画面下方をトリミングしたり、色を少し淡くする点に文晁の特徴が表れています。中国絵画がいかに受け入れられていったか、現物で示すことができる、貴重な作品です。

重要文化財 藍瑛「秋景山水図」明時代・崇禎11年(1638)静嘉堂文庫美術館蔵

重要文化財 谷文晁「藍瑛筆 秋景山水図模本」江戸時代・18~19世紀 静嘉堂文庫美術館蔵

 

日本美術は中国美術抜きには語ることができない、といっても過言ではありません。この機会に明時代、清時代の作品をまとめてご覧になるのはいかがでしょうか。

【展覧会情報】
『あこがれの明清絵画~日本が愛した中国絵画の名品たち~』
■会期/2017年10月28日(土)~12月17日(日)
■会場:静嘉堂文庫美術館
■住所:東京都世田谷区岡本2-23-1
■電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
■公式サイト:http://www.seikado.or.jp
■開室時間:午前10時~午後4時30分(入場は午後4時まで)
■休館日:月曜

取材・文/藤田麻希
美術ライター。明治学院大学大学院芸術学専攻修了。『美術手帖』などへの寄稿ほか、『日本美術全集』『超絶技巧!明治工芸の粋』『村上隆のスーパーフラット・コレクション』など展覧会図録や書籍の編集・執筆も担当。

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