超絶技巧の漆芸美が目白押し！静嘉堂文庫の漆芸名品展―うるしで伝える美の世界―
漆（うるし）を使った工芸品の珠玉の名作を集めた展覧会が、東京・世田谷の静嘉堂文庫美術館で開催されています（～12月11日まで）。
国宝「曜変天目（稲葉天目）」と付属「黒漆天目台（尼崎台）」〔ともに南宋時代（12～13世紀）静嘉堂文庫美術館蔵〕展示期間：11月8日～12月11日
古来、天然の塗料や接着剤、保護膜として用いられてきた“うるし”。静嘉堂文庫美術館所蔵の漆芸コレクションは、飲食器や文房具、調度品のほか、伝世の茶道具や印籠など、幅が広く質の高い内容で知られています。
本展では、館蔵の漆芸品から優品を精選し、10年ぶりに公開します。近年修理を終えた重要文化財「羯鼓催花（かっこさいか）・紅葉賀図密陀絵屏風（もみじのがずみっだえびょうぶ）」をはじめ、日本・中国・朝鮮・琉球などの各地域、各時代で作り出された漆工芸の至高の世界を、一気に味わうことができます。（会期中展示替えあり）
重要文化財「羯鼓催花・紅葉賀図密陀絵屏風」（左）〔桃山～江戸時代初期（17世紀）静嘉堂文庫美術館蔵〕両隻展示：11月8日～11月20日 羯鼓催花図展示：10月8日～11月20日 紅葉賀図展示：11月8日～12月11日
重要文化財「羯鼓催花・紅葉賀図密陀絵屏風」（右）〔桃山～江戸時代初期（17世紀）静嘉堂文庫美術館蔵〕両隻展示：11月8日～11月20日 羯鼓催花図展示：10月8日～11月20日 紅葉賀図展示：11月8日～12月11日
本展の見どころを、静嘉堂文庫美術館学芸員の長谷川祥子さんにうかがいました。
「見どころは多いのですが、まずは、修理後初公開となる羯鼓催花・紅葉賀図密陀絵屏風です。うるしと密陀絵（一種の油絵）で描かれた日本の漆芸史上、類例のない豪華な屏風で、左隻は中国・唐の玄宗皇帝と楊貴妃の故事にちなんだ図、右隻は源氏物語の紅葉賀の巻から画題がとられています。
この作品には、漆絵・蒔絵・金貝、屏風の縁を飾る螺鈿と金貝といった多様な工芸技術が駆使されています。作者、制作背景ともに不明という謎を残すこの傑作を、ごく間近でご堪能いただけます。
次は当館では珍しく、国宝・曜変天目と重文・油滴天目を、茶碗の格に相応しい天目台にのせた姿でお見せします。
曜変天目には茶人に尼崎台（あまがさきだい）と呼ばれた宋時代の優品である無文黒漆の天目台を、油滴天目には明代初期の秀作、堆朱（ついしゅ・彫漆の一種）の天目台を用いています。
また、信長、秀吉、家康と伝来し、著名な茶席に用いられた大名物（おおめいぶつ）の唐物茄子茶入れは、大坂夏の陣の大坂城落城で粉々になった破片を、家康の命で塗師（ぬし）の藤重父子が驚異の技で元の姿に繕ったという逸品です」
多種多彩な作品を通して、日本の漆芸史を辿ることのできる展覧会です。ぜひ足をお運びください。
【漆芸名品展―うるしで伝える美の世界―】
■会期／2016年10月8日（土）～12月11日（日）
■会場／静嘉堂文庫美術館
■住所／東京都世田谷区岡本２－23－１
■電話番号／03・5777・8600（ハローダイヤル）
■料金／一般1000円 大高生700円 ※中学生以下無料、20名以上の団体は割引あり
■開館時間／10時から16時30分まで（入館は16時まで）
■休館日／月曜日（ただし10月10は開館）、10月11日（火）
■アクセス／東急大井町線または田園都市線二子玉川駅より駅前4番バス乗場より東急コーチバス（玉31・32系統）で「静嘉堂文庫」下車徒歩約5分、小田急線成城学園前駅南口バス乗場より二子玉川駅行きで「吉沢」下車徒歩約10分
取材・文／池田充枝
1989年「サライ」
