取材・文/池田充枝
関ヶ原の戦いに勝利した徳川家康が、征夷大将軍の宣下を受け、江戸幕府を開いたのは1603年(慶長8)のことです。家康は将軍職を2年で息子の秀忠に譲り、それ以降将軍職は徳川家によって代々世襲されました。
2代秀忠は長男を早くに亡くし、次男家光に将軍職を譲って3代当主としました。このころから徳川将軍家の長男が将軍職を継ぐという原則が定められましたが、実際には徳川将軍家はたびたび実嗣子を欠き、近親の分家や家康の子を祖とする御三家や御三卿から養子を迎えて家系をつないでいきました。
5代綱吉は館林徳川家より、6代家宣は甲府徳川家より、8代吉宗は紀州徳川家より、11代家斉は一橋徳川家より、14代家茂は紀州徳川家より、15代慶喜は一橋徳川家より、それぞれ迎えられています。
室町幕府の足利家が15代の将軍を出したとはいえ、南北朝・戦国と波乱にみちた不安定な政権であったことを考えると、武家が260年間政権の座を安泰に守った徳川将軍家は、日本の歴史のうえで稀有な存在であったといえます。
そんな徳川将軍家ゆかりの品々を展観し、歴代15人の将軍たちと徳川将軍家を紹介する展覧会「徳川将軍家へようこそ」が、江戸東京博物館で開かれています(~2017年9月24日まで)
本展では、「武家の棟梁-葵三代」「将軍のすがた-徳川の平和」「大奥のみやび-篤姫と和宮」「激動の幕末-家茂の決意、慶喜の決断」「家名相続-新たな時代へ」の章立てで展示を構成し、徳川将軍家の歴史を辿ります。
本展の見どころを、東京都江戸東京博物館の学芸員、小林愛恵さんにうかがいました。
「徳川将軍家を中心に幕府と諸藩が統治を行なった江戸時代は、戦いのほとんどない時代です。その260余年の歴史のなかで、漆芸、染織、金工など数々の匠の技は精緻を極め、見立てや遊び心などの多彩な美意識も育まれて、生活様式や文化に大きな影響をもたらしました。
本展では、公益財団法人德川記念財団が所有する德川宗家伝来の資料を中心に、歴代将軍ゆかりの品々を展示し、15代にわたる将軍たちと徳川将軍家についてご紹介します。
本展が初公開となる《燕子花(かきつばた)に水草・渓流鮎(けいりゅうあゆ)図夏屏風(両面)》は、各扇の中央に格子がはめ込まれ、裏と表で異なるモチーフの絵が描かれた屏風です。両面をじっくりとご覧いただけるよう、展示方法に工夫をこらしました。ぜひお楽しみください」
狩野探幽や酒井抱一の絵画から、天璋院篤姫所用の衣装まで、徳川将軍家の歴史史料の数々が並びます。ぜひ会場で貴重な文化遺産をご鑑賞ください。
【企画展「徳川将軍家へようこそ」】
■会期:2017年8月11日(金・祝)~9月24日(日)
■会場:東京都江戸東京博物館 常設展示室内 5F企画展示室
■Webサイト:http://www.edo-tokyo-museum.or.jp
■開館時間:9時30分から17時30分まで、土曜日は19時30分まで、8月11日・18日・25日の各金曜日はサマーナイトミュージアムで21時まで(入館は閉館30分前まで)
■休館日:8月21日(月)、8月28日(月)、9月4日(月)
取材・文/池田充枝