取材・文/池田充枝
来年の2020年、東京で二度目となるオリンピック・パラリンピックが開かれます。
日本にまだ「スポーツ」という言葉がなかった江戸時代から、2020年には二度目のオリンピック・パラリンピック東京大会が開かれることになるまで、日本の近代スポーツ発展には様々なドラマがありました。
オリンピック・パラリンピック開催を1年後にひかえた今、我が国におけるスポーツとオリンピックの歴史をひもとく意義深い展覧会が開かれています。(8月25日まで)
本展では、江戸時代に行われていた伝統的な「スポーツ」を概観し、明治以降の近代スポーツの受容と流行からオリンピックへの参加、東京大会招致と開催に至るまでの歴史を、様々な資料や映像を通して紹介します。
本展の見どころを、東京都江戸東京博物館の都市歴史研究室学芸員の沓沢博行さんにうかがいました。
「まず観ていただきたいのは、江戸の『スポーツ』事情です。江戸時代には、近代における『スポーツ』とは少し異なりますが、様々な運動や競技が行われていました。
例えば武士は馬術や弓術、剣術などを必要な技術として習得し、時にそれらの競技を観衆が楽しむこともありました。また、庶民の間では、蹴鞠や楊弓が楽しまれ、ことに人気を集めたのが相撲興行です。
歌川豊国(三代)の『極暑あそび』は、隅田川に架かる両国橋のたもとで古式泳法にのっとった変わった泳ぎ方を披露して観衆を楽しませる様子を描いています。
相撲興行は18世紀後半から19世紀初頭に大いに盛り上がり、谷風、雷電為右衛門、小野川ら人気力士を輩出しました。雷電為右衛門所用の道中羽織や手形扇、足袋が展示されますが、身長197cm、体重170kgの雷電の威容をしのぶことができます。
また本展では、日本がオリンピックと関わってきた歴史を資料とともに分かりやすくご紹介します。
明治に入って西洋の様々なスポーツが紹介され、欧化を進める国の後押しもあって近代スポーツは学校教育に取り入れられ、広まっていきました。
そして日本が世界の国々に劣らずスポーツを実践している証として、1912年(明治45)、第5回オリンピック、ストックホルム大会に初出場を果たします。参加した金栗四三と三島弥彦はメダルこそのがしたものの、その後のスポーツ普及に大きな足跡を残しています。
以降のオリンピックでは、テニスの熊谷一弥、柏尾誠一郎や陸上の織田幹雄、人見絹江らメダリストも生まれました。
そしてついに1940年(昭和15)に第12回オリンピックが東京で開催されることが決まりました。しかし、日中戦争の開戦と国際関係の悪化から中止となり、幻の大会となりました。ちなみに東京の替わりに開催予定だったヘルシンキ大会も第二次世界大戦のため中止となっています。
終戦後、日本では復興から高度経済成長へと移った成果を内外に示すべく再びオリンピック招致が進められ、1964年(昭和39)、第18回オリンピックの東京大会が開催されました。そしてオリンピックの後には、パラリンピックも開催されました。『パラリンピック』の名称が愛称として初めて使われたのもこの東京大会です。
本展で、平和の祭典、オリンピックの意義を改めて思い起こしていただければ幸いです」
2020年夏を前に、会場も大いに盛り上がりをみせることでしょう。ぜひ足をお運びください。
【開催要項】
特別展「江戸のスポーツと東京オリンピック」
会期:2019年7月6日(土)~8月25日(日)
会場:東京都江戸東京博物館 1階 特別展示室
住所:東京都墨田区横網1-4-1
電話番号:03・3626・9974
https://www.edo-tokyo-museum.or.jp
開館時間:9時30分から17時30分まで、土曜日は19時30分まで、
7月19日・26日、8月2日・9日・16日・23日の各金曜日は21時まで(入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし7月15日、8月12日は開館)、7月16日(火)
※会期中に一部展示替えあり
取材・文/池田充枝