日本人は古来、樹木に対して畏敬の念をもって見上げてきました。先ごろ造替のなった出雲大社の心御柱(しんのみはしら)や、諏訪大社で行われる7年に一度の御柱(おんはしら)祭りにその一端がうかがわれます。

樹木は、人間の寿命をはるかに超えた長時間、風雪に耐えて大地に立ち続けます。日本人はそうした「樹」を身近な祈りの対象としてきたのです。

大地から伐りとられた「木」に彫られた仏像や神像などの木彫像は、素材になった木材の特徴や彫られ方から仏像に込められた深い意味が伝わってきます。そんな日本の木彫仏の遙かな歴史を辿る展覧会「木×仏像-飛鳥仏から円空へ 日本の木彫仏1000年」が、大阪市立美術館で開かれています(~2017年6月4日まで)。

「木造 菩薩立像」〔飛鳥時代 東京国立博物館蔵〕Image:TNM Image Archives

飛鳥時代の木彫仏のほとんどは樟(クスノキ)を使っていますが、白鳳時代には木目の美しい桧(ヒノキ)が使われるようになり、時代がくだると榧(カヤ)、桜(サクラ)なども用いられました。

仏師たちはそれぞれの木の特性を的確にとらえて槌(つち)をふるい、卓越した技をもって、ときに緻密に、ときに大胆に、ときに自由自在に、鑿(のみ)をあつかって、優れた造形を生み出してきました。

本展は、木彫仏の素材である「木」に注目しながら、彫刻作品としての卓越した「技」にも注目して、日本の木彫仏の魅力を再発見することを目的としています。飛鳥仏から円空まで、日本の木彫仏の歴史を、約60件の作品を通して辿ります。

円空作「木造 秋葉権現三尊像」〔江戸時代〕

本展の見どころを、大阪市立美術館の学芸課・齋藤龍一さんにうかがいました。

「木に注目する。こうした切り口で仏教彫刻の展覧会が開催されるのは、そう多いことではなく、おそらく東京国立博物館「仏像」展(2006年)以来、約10年ぶりだと思います。

会場構成は、木彫仏の魅力を最大限に引き出すため、ほとんどの作品を360°ぐるりご覧いただけるように展示しています。ふだんあまり目にすることがない仏像の横顔や後ろ姿も必見です。

なお展覧会図録は、なるべく新規に撮影した画像を使用し、まるで仏像の写真集のような内容に仕上げましたので、ぜひ手に取ってご覧ください」

本展は、大阪市立美術館の一会場のみの開催となります。一期一会の展覧会、ぜひお見逃しなく。

【特別展 木×仏像-飛鳥仏から円空へ 日本の木彫仏1000年】
■会期:2017年4月8日(土)~6月4日(日)
■会場:大阪市立美術館
■住所:大阪市天王寺区茶臼山町1-82
■電話番号:06・4301・7285(大阪市総合コールセンター なにわコール)
■ウェブサイト:http://www.osaka-art-museum.jp/
■開館時間:9時30分から17時まで(入館は16時30分まで)
■休館日:月曜日(ただし5月1日は開館)
■料金:一般1300(1100)円 大高生1100(900)円 ( )内は20名以上の団体料金、中学生以下無料、障がい者手帳所持者と介護者1名は無料(要証明書)
■アクセス:大阪市営地下鉄御堂筋線・谷町線天王寺駅15・16番出口、JR天王寺駅中央改札、近鉄阿部野橋駅西改札、阪堺電車天王寺駅前駅、市バス「あべの橋停留所」よりいずれも北へ約400m

取材・文/池田充枝

 

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